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瞑想 アニミズムとシャマニズム

オーストラリア(サフルランド)という隔絶の地へ渡ったアボリジナルたちは、脳内に起こった「こころの萌芽」の初期仕様を保ったまま、現代に至る数万年もの間「ドリームタイム」を生き続けて来ましたが、他の地域へ分散していったヒトの仲間たちにとっては、それは正にはかない「夢」でした。
自然界のあらゆるものに「精霊」という生命エネルギーの表れを見出し、ヒトもまたその大いなるエネルギーシステムの一部と考える、いわゆる「アニミズム」の世界にアボリジナルは生きていますが、この世界観の成立には、自意識と無意識、根源意識との間を自由に行き来できる能力を持っていることが前提となっていました。
アボリジナル以外の社会では、このヒトが元来持っていた原初的能力が退化し、一部のメンバーだけのものになってしまったため、「ドリームタイム」を共有できなくなっていったのです。

現代人と同じ仕様の「こころ」を宿し、「ホモ・サピエンス・サピエンス」となったヒトたちが、洞窟の闇から外の世界に恐る恐る出てみると、そこには輝くばかりの美しい世界が広がっていました。
空や星々、草木や山々、川や海、動物たちに接し、各々の持つユニークな生命の働きを感じ取った彼らは、それら一つ一つに名前を付けていきました。
プレサピエンスの人類たちと違い、脳内細胞を流動的に活用し、無意識から様々なソースを引き出して、メタファーやシンボルを他のメンバーと共有することができた彼らは、自然界のあらゆる事物に個性的なキャラクターを設定して、登場人物(アニマ)たちが生き生きと活躍する物語を紡ぎ出し、蕩々と語り合いました。
後の世において神話(ミュトス)として語られるようになった物語の土壌は、このようにヒトと世界とが遭遇した中で、アニマたちが動き回る「アニメーション」として作られていったのです。

アニミズムの原型が、アフリカ大陸で作られてから世界に拡散していったのか、それともヒトが分散していった各地域で別々に形成されていったのかはわかりませんが、地球上の原始ヒト社会には、遍くこうした世界観が行き渡っていきました。
植物や動物たち、そして自然界の諸現象は、超人間的な精霊(アニマ)としての力を持ち、ヒトもまた一個のアニマとして相互に関わり合いながら、共通の世界を構成しています。
「からだ=空だ」は現象世界で使われるひと時の仮もので、本体であるアニマは死と共に遊離して天に戻り、時が来ればまた新しい「からだ」をまとって再生します。
前回ヒトであったからといって、次もヒトとして再生するとは限らず、その意味で全ての生きとし生ける物ものは兄弟関係にあると言えるため、アニマを持つ者としては、蟻一匹草一本たりとも疎かには扱えません。
アニミズムの世界はこのように循環と再生、共存のシステムで成り立っており、今でいうところの「サスティナブル・ソサエティ=持続可能社会」そのものです。

ところがこのような「ドリームタイム」の世界観は、ヒトが広大なユーラシア大陸を放浪し散らばって行く間に、あちらこちらで綻んでいきました。
移動を伴にするメンバー数が増え、バンドが大きくなるにつれ、言語によるコミュニケーションの役割が重要になっていきます。
多くの仲間たちに食料を供給しようと、ヘラジカやマンモス、ナウマンゾウなどの大型動物を狩るようになったことで、集団での共同作業と役割分担が生まれ、複雑な言葉のやりとりが必要となってきたためです。
また当時のユーラシアには、ネアンデルタール人やデニソワ人などの先住民が暮らしていたため、集団間で緊張状態が生じたことも多々あったでしょう。
言語を操り現象世界との接点となる自意識の使用頻度が高まるにつれ、無意識や根源意識との連絡回路は縮小し、祭りや儀礼などの特別なイベント時に使用するだけの非常通路となり、通常時はOFF状態となっていきました。

日頃のコミュニケーションが自意識主導となった部族社会においては、祭礼時に意識の旅をガイドする案内役が必要となり、そうした役割を受け持つ専門職として「シャマン」が誕生しました。
「シャマンsaman」は本来、北方ユーラシア狩猟民エヴェンキEvenki族の、精霊など超自然的存在と関わる専門家を指す言葉で、他の部族や地域では実際の呼び名は異なりますが、同様の役割を持つ霊的職能者は、世界中ほとんどの部族社会に存在していたようです。
シャマンは変性意識状態を使いこなすことで、神々や精霊、死者たちと交信し、祭司として共同体の方向性の決定に関与し、メンバーのイニシエーションや病人の治療を行う、部族の指導者的存在となりました。
このようにシャマンを通して、精霊たちとつながりを持つ部族社会のあり方を、アニミズムに対して「シャマニズム」と呼んでいます。
次回はこのシャマニズムの世界について書きたいと思います。

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