姿勢 立ち姿勢
前回、姿勢は重力に対するカラダの応答行為だと書きました。
それは本来、地上の動物が持っている自然な環境適応反応なのですが、ヒトは往々にしてこうした外的刺激に対し、自然でない反応をしがちです。
例えばあまり良くない座り方でデスクワークをしていると、だんだん首や腰への負担がたまって疲れを感じてきますが、「もう少し頑張ろう!」とか、「終業時間までは続けないと!」と考えて、そのまま無理な姿勢で仕事を続けてしまいます。
そしてその不自然な姿勢が習慣化していって、首が痛い、腰が痛い、疲れが取れない状態となり、仕事の効率も悪くなってしまいます。
「重力にはゆめゆめ逆らうな!」という、カラダの発する声を聴かずに、アタマで行動してしまった結果です。
立ち姿勢でいる時も、力学的に重力と上手に折り合いをつけて立っていれば問題はないのですが、わざわざ前後左右に傾いて、カラダの局所局所に負担がかかる立ち方をしてしまいます。
悩み事があったり落ち込んだりしている時は、どうしても前屈みになって首や肩に負担をかける姿勢になりますし、逆に良い姿勢でいようとして「気を付け」をすれば、腰が反りすぎて腰痛の原因となります。
正しい立ち姿勢については、いろいろな方々がそれらしい説を様々挙げているようですが、そもそもどんな状況下でも当てはまる、ユニバーサルな正しい立ち方は存在しないと考えられます。
門番として一か所に長時間立ち続ける場合と、揺れる電車内でつり革片手に立っている場合、800メートル走のスタートを待っている場合などでは、それぞれ最適な姿勢は違ってきます。
「立っている」という状態は、「次にどう動くか」を準備している行為であるからです。
じっと動かないように立っている時でも、カラダの中身は必ず動き続けています。
呼吸や血液循環とともに、カラダの重心位置は微妙に変化を続けているため、足裏の重心位置もそれにつれて移動させていなくてはなりません。
生き物の一員である限り、ヒトのカラダは動的状態にあるのが平常であって、その中の一過程に「立つ」という動的状態も含まれているのだと思えば良いでしょう。
この生命現象の止めどない動的過程の中で、「立つ」行為を行う上で何を差し置いても大切なのが、「地球の重力に逆らわない」ことなのです。
重力は日常の生活の中に存在している、一番大きな自然の力です。
そして重力は、常に地球の中心に向かってカラダを引っ張っています。
ヒトは足の裏を地球の中心に向けていなければ、立つ事はできません。
そして地球に接する足裏の上に、地球の中心とは真逆の方向線上にアシ(脚)やカラダ、アタマを乗せることで、初めて立ち姿勢は成り立ちます。
「重力軸に体軸を合わせる」こと。
これが立ち姿勢で一番大切なポイントです。
整体的には、「骨で立つ」という言い方をしています。
脊椎動物であるヒトのカラダは、骨格で垂直に支えられるようにできていて、その重心線として体軸が通っています。
体軸が重力軸に近ければ近いほど安定した姿勢となり、逆に重力軸から体軸を傾けたり遠ざけたりすることで、あらゆるカラダの動きが始まっていきます。
「動き出すための準備体勢」であることが、立ち姿勢なのだということです。