ひまわり | 超短編小説
初夏に揺さぶられ、近所の花屋は新しい花でいっぱいだ。
この花屋にはプレゼントなどでよくお世話になっているから、通っていると言ってもいいのかもしれない。
今日は21歳になる幼なじみの優香にプレゼントする花を買いに来た。
この元気な花は、僕の一番好きな花。
花言葉なんてものは知らない。知らなくてもいい。だから、調べていない。
知らない言葉に縛られて、その花をそういう目で見るのが嫌。
明るい気持ちにさせてくれる、この花がただただ好きなのだ。
でも、優香は好きか分からないし……。
僕の好きを押し付けるのは、ちょっとよくないかな……。
頭の中でぐるぐるさせていると、低音が響く。
「ひまわり、お好きなんですか?」
花屋は女性が働くイメージを持ってしまっていた。男の人もいるんだ。
高身長で黒髪のセンター分け、スポーツをしていると思われる腕。声とは逆で、優しそうな顔立ち。日焼けしていない白い肌。
「好きです……けど」
僕の言葉を聞くとすぐ、1本のひまわりをビニールで丁寧に包み、渡してくる店員。
「はいこれ、あげます。内緒ですよ」
その店員は屈んで口元に人差し指を立てるのをやめ、真剣な眼差しでもう一言、言い残した。
「……ずっと、前から」
僕はそのひまわりを持ったまま、レジにもどる店員を見つめることしかできなかった。
花言葉は、『あなただけを見つめる』
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