夏目純名

タバコ一本吸うお供にちょうどいいショートサイズの文章を目指しています。

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マガジン

  • 喫煙シリーズ5mg

    【喫煙シリーズ】 わたしの脳内で暮らしている山田と陽太の日常切り抜き

最近の記事

すきな本たち【幼少期編】

読了本は少ないが、本が好きなわたしを作った本たち。印象に残った本たち。面白かった本たち。(何故かとなりのトトロ考察付き) ★そらまめくんのベッド なかやみわ作・絵 お母さんが読み聞かせしてくれていた。いろんな絵本の中でも、これがダントツトップ。 毎晩、そらまめくんと夜を共にしていた。 ふかふかのベッド、どんなのだろうなと想像するのが楽しかった。 そらまめ食べてみたい!と、意気揚々とそらまめを食べるも美味しくなかった。 ★小学館 魚の図鑑 小学館の図鑑しか知らない時期。

    • かぐやひめ | 超短編小説

      月の満ち欠けで地球が回っていることを感じられて好き。 大きな声で言わなくても、月はいつだって綺麗だから、中秋の名月は団子を食べるに限る。 ほのかに砂糖の味がする塊は唾液に溶かされ、口の中から徐々に消えていく。 かぐや姫は月から来たと言うから、竹は月と地球を繋ぐトンネルだと考え、竹は買ってきてある。 花屋には「ススキですよ」と指摘された。 かぐや姫と同じようにチート宇宙旅行がしたいだけで、別に十五夜を楽しみたいわけではない。よってススキはいらない、と断った。 異物を見るよう

      • 青空 超短編小説

        ちょっと早起きをしてみた日。 わたしは散歩に出かけた。すっぴんで、寝巻きのまま外に出るのは久しぶりだ。 髪の毛も束ねていないが、とりあえず外に出たい気分だった。 「うわー、まだ涼しー。やべー」 ひとりごとで騒ぎながら歩いた。 コンビニに寄り、クッキーとコーヒーを買う。客はわたし以外いない。 じゃらじゃらと流れ落ちるお釣りの音が、うるさく耳に響いた。 コンビニから出ると太陽が昇っており、真夏の暑さが肌を刺してくる。チョコチップクッキーとプレーンクッキーで少し悩んだからか、と

        • わたしとモーグルと“上村愛子”

          オリンピックがわたしを生かしている。 わたしをオリンピックに引き込んだ一番の理由に“上村愛子”という存在がいる。 上村愛子は1998長野・2002ソルトレークシティ・2006トリノ・2010バンクーバー・2014ソチの5大会連続出場、入賞をしている。 当時、確実に日本を沸かせていた人物。 メダル候補という期待もしっかり受けていた。 わたしが意思を持って冬季オリンピックを観たのは2010年バンクーバー五輪だった。 フィギュアスケートの浅田真央ちゃんが大活躍の時代だったこと

        すきな本たち【幼少期編】

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        • 喫煙シリーズ5mg
          5本

        記事

          恋をする

          恋は魔法みたいなものだ。 愛は魔法が解けてもいい、と思えることなんじゃないか。 湧き出た感情ごと思い出を、冷凍でもフロッピーでもUSBでも何でもいいから保存したいのが、恋愛なんじゃないか。 写真なんかじゃおさまらない、2つの心臓が語る信号を灯し合うことが、会話なんじゃないか。

          おかねの上下関係

          おかねのはなし。 文句がある。どんどんどんどん単位が大きくなっていることに、わたしは腹を立てている。 大谷翔平の給料のでかさとか。車に貼り付けられた値札に書かれているゼロの数とか。 どうして? 単位は大きくなるのに、紙一枚の最大容量は一万で滞っているのはどうして? 印刷するのにも管理するのにも、お金や人力が必要になるから単位を大きくしなければ、削減できるものもあるのに。 わたしたちは何に憧れて、物価を上げたり給料を上げたりしているんだろう。何のために、ゼロの数を自慢している

          おかねの上下関係

          マイメモリー喫煙 |超短編小説

          「これ、わたし山田の半生ドキュメンタリー。作ってきたから見て。ナレーションわたしね。面白いもんじゃないけど、これは君に伝えなくちゃいけないから」 君は驚いた表情をしていたけれど、無視してテレビをつけた。 わたしは人生のチュートリアルを終えたあの日から、毎日が退屈だった。 毎日の暮らしは同じことの繰り返し。 学校はオプションでいじめが付いてたし、わたしと友達になってくれる人なんていないんだって諦めてた。 みんなの家はお母さんって呼ぶのに、わたしは“サリー”って呼んでたし、

          マイメモリー喫煙 |超短編小説

          言葉弁当

          感情を言葉っていう箱に詰める時、少し見栄を張って綺麗に整えてみたりする。 普段使わない漢字を使ったり、相手が好きそうな言葉や喜びそうな言葉を選んだり。 収まりきらず溢れたりもする。 その場合だいたい、上手く伝えられないけれど、と前置きして保険をかける。 お弁当のおかずを作りすぎた時みたいに、入りきらなかった言葉たちは自分で咀嚼することになる。 スカスカで言葉ばっかり大きくもなったりもする。目標を定める時、だいたい、わたしはこう。 お土産用に、とキャリーケースに余裕を持たせ

          ひまわり | 超短編小説

          初夏に揺さぶられ、近所の花屋は新しい花でいっぱいだ。 この花屋にはプレゼントなどでよくお世話になっているから、通っていると言ってもいいのかもしれない。 今日は21歳になる幼なじみの優香にプレゼントする花を買いに来た。 この元気な花は、僕の一番好きな花。 花言葉なんてものは知らない。知らなくてもいい。だから、調べていない。 知らない言葉に縛られて、その花をそういう目で見るのが嫌。 明るい気持ちにさせてくれる、この花がただただ好きなのだ。 でも、優香は好きか分からないし……

          ひまわり | 超短編小説

          仮想空間への逃亡計画

          蓄積しておいた知識と染み付かせた感覚で仕事をしながら、今日はずっと【仮想空間へ逃げ込むにはどうしたらいいか】を考えていた。 まず、私は「仮想空間に逃げ込む」と「現実逃避」を近い感覚だと考えた。 そこで、手っ取り早い方法として導き出したのが映画だ。 おそらく、映画を観た後の“余韻”というものは、ほとんどが「自分も映画の登場人物に思える」ことで生まれるものだ。 つまり、この“余韻”をより強く残し、且つ、現実世界の情報を遮断することで、仮想空間に逃げ込むことが可能だと私は考えた。

          仮想空間への逃亡計画

          ベランダ喫煙 ┃ 超短編小説

          サリーを家によんで寂しさを紛らわしている。 わたしは落ち込んでも、わたしだけは落ち込んでも1人でなんとか凌げる人間だと思っていたのに。どうやら人並みに人に頼る必要があるみたいだ。 穏やかな風が通るベランダでわたしはサリーとたばこを吸う。わたしが最近駅近くの喫煙所で出会った男の人が気になっているという話をした。 「その人のこと、好きなの? 一目惚れみたいなこと?」 サリーはわたしに訊く。汚れていないふりをしてわたしをみるその瞳が年上なんだ、とはっきり感じさせる。 「星と月の間み

          ベランダ喫煙 ┃ 超短編小説

          喫煙自販機 │ 超短編小説

          僕と山田の出会いは自販機だった。 潰れた駄菓子屋の前に残った自販機。駅から離れているし、道路からも離れている。人通りも少なければ、車の通りもない。 そんなところで彼女が自販機でジュースを買っていて、僕はその横のベンチで絵を描いていた。 「すみません、コーラ買ったら一緒にお茶も出てきちゃって。……要ります?」 声をかけられ急いでスケッチブックをしまう。 「あ、欲しいです。ありがとうございます」 僕がすぐに手を伸ばして受け取ると、満足と驚きが混じったような表情をした。 「まさ

          喫煙自販機 │ 超短編小説

          喫煙クリスマス | 超短編小説

          こんなに寒い深夜帯に山田は僕を「星を見に行こう」と誘った。 身支度を進める山田の傷んだ毛先は、もう既にマフラーに包まれていた。 「たまにはわざわざ外にタバコ吸いに行くのもいいかもね」 「本当に星見たいと思ってるし」 昔、少しだけ山田と遊んだ記憶のある公園のブランコで星を見た。 山田はずっと「今日は25日だからホワイトクリスマスだ」と言う。 「だって星降る夜とか言うし、星って白く見えるし。じゃあホワイトクリスマスじゃん。でも星って降ってんの?どこで?陽太さん見たことある?

          喫煙クリスマス | 超短編小説

          喫煙スペース |超短編小説

          「地球が2個あっても、私達は同じ地球にいると思う」  タバコを吸いながら山田が言った。 山田は紙タバコしか吸わない。火をつけるのは僕の仕事だった。 「もし選択制なら、僕は山田と別の地球を選ぶと思う」 「なんで? 私の事好きじゃないの?」 「だって、山田に僕はもったいないから」 僕は山田の顔を見ながら言うと、山田は下を向いてタバコの火を消した。 「もうひとつの地球には、僕なんかよりもっといい男がいるよ」 また僕は山田に火をつける。 「よかったね、地球が1個で」 -

          喫煙スペース |超短編小説

          保冷剤 | 超短編小説

          暑すぎる今朝は、シャワーを浴びることにした。 サザンオールスターズの『真夏の果実』を流すと、キンキンと体に響いて心地よかった。 昨日見た夢では空に種を撒いて、花が咲いた。 でも起きてみれば、青空なんて存在しないんじゃないかというほどの曇天。 こんな日は自分が生きてる意味を理解し難い。 冷えた心はずっと凍ったままだ。 ずっと体は小さくて、この広い部屋にはもったいない。 一般的な人間が一人暮らしするにしても広い部屋に身長15cmの私がいるだけの家は、3日前に生まれた。

          保冷剤 | 超短編小説