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圧倒的な才能たち


今日は吉祥寺シアターに、
「2030 世界漂流」という舞台を観にいってきました。


小池博史ブリッジプロジェクト
2030 世界漂流
http://kikh.com/special/hyoryu/


あらすじを紹介するとか、演出意図を解説するとか、そんな野暮なことはできません。

小池さんがつくる舞台を観て思うのは、

この、いまの世の中に、
こんな風に身体表現ができるパフォーマーがいたのか

っていう驚きです。そして、嫉妬も。

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多くの人たちは「踊り」と聞くと、振り付けられた振りを再現し、音楽に合わせて、人の心の躍動や、喜びや、悲しみを表現することを想像します。

手が指の先まで伸びているとか、足がスラッとあがるとか、複数人で揃ってるとか、すごく笑顔だとか、そういうところに「素敵だな」って感じたりするのでしょう。

そういった踊りは、僕にとっては「整えられた踊り」のようにうつります。「理性的な踊り」とも言い換えられるかもしれない。

バレエや、モダンダンスや、ジャズダンス、タップダンス、シアターダンス。そういったもの。

もちろんそこでは、エンターテイメントや芸術が表現されるし、愛や、憎しみや、喪失や、喜び、疑い、といった人間の感情も表現されます。


けれど、小池さんがつくる舞台に現れてくる踊りは、僕の目に、「整えない踊り」としてうつります。「肉体的な踊り」とも言い換えられるかもしれない。

そこでは、さまざまな感情が、表出し交換され変化していきますが、同時に、より大きな前提として、「感情以前の、肉体の存在」みたいなものがあることの方が大事にされているような気がします。

それは、ただ僕だけが、そういう気がするだけかもしれないけど。

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「2030 世界漂流」は、演者に踊る体力を要求する作品だと思いますが、観客にも観る体力を要求しています。

正直、僕は今回、観てるのが途中で辛かった。「ううう.....」ってなりました。なんというか、集中し続けることが辛くて。

「観客側の見易さ」とかは、いっさい考慮されてない。「わかりやすさ」とか、そもそもあの世界の辞書には言葉自体が載ってないのかもしれない。

でも、「わかりやすく」ないから、「わからない」わけではないのです。

舞台上から飛んでくるものを、そのままガッと手てづかみにして体の中に取り入れるなり、なされるがままに身を委ねるなりすると、わかることがたくさんあるはずなのです。

これは僕個人的な思いですが、曲がりなりにも商業の舞台にちょっとでも関わらせていただいている者として、「世界漂流」みたいな舞台と共鳴できるような感覚を持ち続けながら、自分の表現をしていきたいと思います。

そしてできることなら、商業演劇を好んで観てくださるお客様の多くにも、この「世界漂流」みたいな舞台を観る体力をもって、さまざまな舞台を観てほししいと思います。


もちろん、舞台に何を求めるかってのは、人それぞれだから、いいのだけれど。


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1月末からは、KAATでの「三文オペラ」に何回か通いました。昨日の個人的な最後の観劇だけは前の席から、それ以外は舞台脇のP席で舞台をみてました。

谷賢一さんという演出家が、僕は好きで好きで、じつは「三文オペラ」にも心の底から出たかった。

谷さんが仕掛けた演出的なギミック、谷さんが狙った上演台本の効果。どこもかしこも気を抜く暇がなく、目も耳も毛穴も、全身のありとあらゆる感覚器の穴を開きっぱなしにしてないと瞬く間に騙されてしまいそうな舞台でした。

やっぱり、観客として舞台を観にいっても、どうしても「自分がやるとしたら」という観点から観ちゃうわけで。

もし、いつか、谷さんの舞台に立てることがあるならば。

谷さんが意図したものをひとつ残らず見逃さず、取り逃さず、舞台上に具現化し、その上でさらに自分が付与できるものをガシガシ投げ返していく。そんな表現者にならねばな、と思いました。そう思って観てました。


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小池博史さんと、谷賢一さん。

圧倒的な才能のある演出家だと思います。

そして、「三文オペラ」の音楽チーム、「2030 世界漂流」の音楽チーム。どちらも、途轍もなくユニークで、彼らもまた圧倒的な才能を持っている人たちだと思います。

今日の舞台の出演者の皆さんも、本当にすごかった。あんな身体がこの世にあるのかと、本当に打ちひしがれました。

そう、打ちひしがれたのです。

「僕は、この人たちと同じステージに立てるだろうか」って。

同じ表現者として、果たして彼らと戦えるだろうかと、どうやったら戦えるだろうかと、ずっと考えてました。

この悔しさは、2/5からはじまる「ヤマガヒ-しんしん-」の舞台に全部ぶつけてやろうと思います。


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ところで、「2030 世界漂流」に出演されてた日下麻彩さんという女優さんが、どうやら大学の後輩のようです。

こんな感覚をもって身体を使い、歌をうたえる人が、クラシックのフィールドにもいてくれるってことが、僕にはものすごく目映い希望の光のように思えます。


「2030 世界漂流」めっちゃおすすめですよ。

どうか観て下さい。







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