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まっさらな時間に自分を横たえ。

こんにちは、山野靖博です!

休みはとった方がいいよね、という話を書きます。

さいきんは社会の流れとしても「休みはとった方がいい」という方向に認識も制度も変化してきてますよね。

有給休暇の取得を会社側が促すとか、産休育休を男女関係なく取れるようになっているとか、そんな話をたびたび聞いたりします。

もちろん、仕事の環境によっては今でもモーレツに働いてらっしゃる方も日本中にたくさんいるだろうし、休むよりも働いていた方が好きだという方もいらっしゃるでしょう。


いずれにせよ、人間は頑張り過ぎちゃうとどこかで故障や破綻が生じる弱い存在だと僕は思っていて、だから適度に休むことが大切だという価値観を自分の生活に組み込んでおいた方が、サスティナブル(持続可能)でヘルシー(健康)な人生を歩めるはずです。


もうひとつ。

たとえば週に2日をしっかり休む、とかもそうなんですが、ときおり1ヶ月とか2ヶ月とか、そういう比較的長いスパンでの休みを人生に組み込むこともとっても大切なんじゃないかと思ったのです。

ヨーロッパとかだったら年に1回のバカンス取得なんかは当たり前のことだったりしますけど、日本で生活をしているとなかなかそうはいきませんよね。

振り返ってみると僕は2020年、あの新型コロナ流行の1年目にドカンと大きな「休み」を経験しました。

僕は俳優の仕事をしているのですが、あのときは働きたくても働けないというか、舞台業界・演劇業界が政府からの「自粛要請」によって全休止していた状態でした。やるせなさや焦り、不安ももちろんありました。

ただ振り返ってみると、あのときに2〜3ヶ月、なにも仕事がない「空白の時間」があったことは僕の人生にとってポジティブなことだったなと思うのです。

誤解してほしくないのは、ああやって世の中全体が大変な目にあって、多くの人の仕事が奪われていたことがポジティブだった、という意味ではないということです。あくまでも、僕というひとりの人間の人生を眺めたときに、あの「空白の時間」こそ豊かなものを生み出す源泉だったと感じるということです。

2016年からミュージカルの仕事をはじめて、幸運なことにその後もたくさんの作品に恵まれました。特に2018、2019年あたりは通年で、ずっとなにかの作品に関わっているような感覚で暮らしていたような記憶があります。

そこにポンと、なにもしなくていい数ヶ月が与えられたとき僕は、仕事に慌ただしい日々の中ではできなかったことに落ち着いて挑戦する時間を持てたんですよね。

たとえば買ったのに読めてなかった本を読むとか、描いてみたかった絵を描いてみるとか、崩し字を読む練習をするとか、あるいは初めて戯曲を書いてみるとか。

直近でやらなければいけない色々が霧散したからこそ、「別に急いでやらなくてもいいけどやりたいなと思ってたこと」をやる余裕ができたという。これは本当に幸運なことでした。あの2020年の空白の時間があったから僕は、人生のステップをひとつ上がれたと思っています。


その1回だけだったら「あのときはああだったなー」ぐらいの話なんですが、じつは2024年の今まさに、ふたたび「空白の時間」を過ごしているのです。

正確に言えば、2020年ほどの何もなさではなく、スポットでの仕事はちょくちょくあるのですが、1週間過ごすなかの2〜3日は何も予定のない日があるようなリズムで生活ができています。そしてそのようなリズムの生活が3ヶ月ほど続いています。

収入的には正直不安があるのですが、日々の充実度で考えると本当にありがたく満足度の高い時間を過ごしています。

2020年の後半に舞台の仕事が復活してきてからというもの、これも嬉しいことにたくさんの作品に関わることができました。その分、この3年とちょっとという時間は与えられた仕事や課題を乗り越えるのに必死で過ぎていったような手触りもあったのです。

2020年の後半から、休んでいた分を取り戻すかのようにたくさん動いた時期が続きまして、そうなるとやっぱり疲れも溜まってくるんですよね。これは当然の話だと思います。仕事があるのはありがたいんだけど、アウトプットが続きすぎると消耗するのも事実だ、という。


そんなタイミングで、ゆったりとした休み的時間を3ヶ月近く取れたのは僕にとって幸運なことでした。

2020年のあの休みの時間に僕は、自分の人生のこれまでとこれからについてたくさん考え、自分がそこからどんな姿勢で働いていくべきかのヴィジョンを決めたのですが、今回の休みにも似たようなことを考えることができました。

別段、これまでと何かを変えるわけではないですが、こうやって2〜3年に一度、自分の人生を棚卸しできるのはとってもいいことなんじゃないでしょうか。

僕はこの3ヶ月で、高校大学時代に匹敵するくらいの量の本を読んだと思います。学生時代の僕はたっぷり時間を持ってたから、本当にたくさんの本を読んでいたんですよね。それに近い感じで本を読む時間がとれました。

ふだんなら読まないような種類の本とか、昔読んだきりの本を読み返したりとかできました。あと、これから先に創作していきたいものに関連した資料もたくさん集められましたし、それもコツコツ読み進めています。

ずっとゆっくり会えていなかった人と会って近況報告をし合う時間もとれましたし、これまで行ったことのないような場所に行って初めて会った人と話をする時間もありました。

自分の生活習慣を見直して、今後の自分がどうありたいかを考え直し、食事や運動の計画を立てることもできました。

新しいチャレンジや新しい学びもいくつか積み重ねることができました。


数年に1度のまとまった休みというのは、日常と化している「いつもの仕事」や「いつもの生活」のサイクルから自分を遠ざけて、まっさらな時間の中に自分自身を横たえ、なににも所属していない「ただの自分」として自分を点検できる素晴らしい機会を与えてくれます。

普段だったら後回しにしていたようなことを考えたり、忙しいと見て見ぬふりをしちゃうような自分の課題に正面から取り組んだりする機会を、まとまった休みが与えてくれます。


そりゃ、生きているといろいろありますから、しっかりと休みを取るというのは誰にでも選択できることじゃないですが、僕としてはまた3年後くらいにこういうのんびりした時間を取れると、またそこでひとつ人生が動くような気がしています。



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