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のっぺらぼう


つるりとした肌で生まれた
僕らはのっぺらぼうだ
頭もまん丸でつるつるしているし
指にだって一本の毛もない


僕らはでこぼこの人たちが羨ましい
あちらこちらにくぼみがあって
あちらこちらに出っ張りがある
なんだか掴みどころというものがあるような気がするし
それは僕らにはないものだ

でこぼこに生まれてたら
こののっぺりとした日常も
いくらか違ったものだったろう


僕らはざらざらの人たちも羨ましい
大小さまざまなざらざらが
膝のあたりやうなじのあたりから
全身に そうさ全身に広がっている
そこにはどうして手触りというものがあるし
それは僕らにはないものだ

ざらざらが少しでもあったなら
つっかかることのないこの日々も
いくらか違ったものだったろうか


言ってしまえばトゲトゲの人だって
僕らにしたら本当に羨ましい
チクチクからグサリまで
多種多様なトゲトゲが覆うその身体は
触れた人の身体に痕跡を残していく

それは僕らにはないものだ
トゲトゲのうちの「ト」だけでも
この身体にあったとしたら
人に撫でまわされるだけの毎日も
違ったものになったろう

手始めに僕は
こののっぺらな身体に
トゲトゲをくっつけようと思う
竹ひごで骨格をつくり和紙を表皮にする
それらをくっつける糊はもちろん
死にかけた老人の目ヤニだ
あるいは竹ひごよりも針金が
和紙よりも動物の革がいいのかもしれない
けれどもまずは竹ひごと和紙からはじめる
その内側に何を詰めるのかは
どうにも思いつかないのだけれど
まずはトゲを ひとつのトゲを作るぞ







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山野 靖博(ぷりっつさん)
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