授業ノート:オンラインコミュニケーション
ゲームでメタバース?
2021年度秋学期15コマの授業終了。一度の対面授業を含めたオンライン講座の検証も終え、コンテンツ再構成に着手したがNotionからの移行が面倒で進まない。
今年は発表など参加要素を増やしてはみたものの、リアルの教室のように生徒が自由に質問したり、ちょっとクラス前後で相談されたりといった学期を通じて深まる混ざり合いの感じはどうしても少なくなる。やはり、対面授業「集って、話すこと」かと、諦め気味だったが、忙しくてしばらくほっておいた2021年GOTY3冠(Game of the Year, Best Family, Best Multiplayer)のゲーム”It Takes Two”をやっているうちに、何かヒントを得られた気がした。
簡単にゲームの概要を説明しておく。
・プレイヤー2人が揃わないとできない(平均プレイ時間は15時間。オフライン/オンライン。オンラインは友達をフレンドパスで無料招待可)
・ゲーム全編でプレーヤーの協力が求められる(過去の様々なゲームスタイルを本歌取りしてぶち込んだ7チャプター約40のダンジョン)
・いろいろなパタンのゲーム/操作スキルをひたすら強制的に学んでいく(ゲーム操作の面白さを様々なシーンでたのしみつつ、協調、相手を助けたり役割分担する)
オンラインで同じ目標を追求する
授業のなかでHorizon Workplace等にも触れたが、VRで空間に没入し時間を共に過ごすリアルは、入ってはじめて分かるもの。しかし2段組弁当箱大のヘッドセットの90分つけっぱなしは疲れる。3Dアバターを2次元グリッドビュー(Zoom)で配信する講義では、90分なら90分の演出案(ストーリーとコンテンツ)的構想をはっきりさせることで、インタラクションはちゃんと起こる。先生とか生徒とかいった役割があって、学ぶ意義が共有されている(という幻想)さえあれば、あとはなんとかなるのだろう。
ゲームの話に戻る。離婚寸前の夫婦が、危機を乗り越えていく。よくあるドラマ仕立て(しかし子供によっては深刻な)趣向ではあるが、ゲームで協働を強制されることで、夫婦のみならず、オンラインでしか会えない友達とも"リユニオン"できるということのようだ。そこで、以下の2つのユースケースで試してみることにした。
ケース①:熟年夫婦によるオフライン二人プレイ(1台のコンソールに2台のコントローラー)
ケース②:友達とのオンライン二人プレイ(EAネットワーク)
以下ネタバレ含む。まったく白地からやりたい人は読まない方が良いです。
横で一緒に考えながら課題を解いていく
まずは、熟年夫婦によるオフライン二人プレイの場合である。1台のプレステに2台のコントローラーをつないで横隣りで進めていく。
二人ともそんなにゲームをやってきたわけでなく、空間認識の機能も劣化してきているので、操作にも謎解きにも難航する。そうすると当然ながらとげとげとした感じになり、険悪になる。主人公である夫も気持ちも妻の気持ちもよくわかる。
しかし、時間をかけて(次の週末とかに)できなかったことに再挑戦すると、達成感は大きく、協働の喜びを感じる。そして、最後には「何か」を一緒に成し遂げた感動(相方はもう少し醒めている)
アバターを通じて自分の気づきを相手に伝える
では、友達とのオンラインでのプレイはどうだったか?最近子供が生まれてめっきりリアルに遊ぶことが少なくなった年の差15歳。21時過ぎ寝かしつかせた後に招待がきてプレイを始める。
こちらのケースはどうしてもこちらが足引っ張り役になり、ストレスが大きい。しかも幼児の手前か、相手がボイスチャットを封印したので、なにか気がついていてもお互いアドバイスにも苦心する(たまに相手の声がノイズ交じりにコれてくる。混線していたこともある。仕様か妄語かもはや分からない)
途中シナリオに詰まり、ディスコミュケーションで、お互い怒り爆発しそうになったところに、相手をいじめるミニアトラクションがあったりとか、操作の巧拙/ゲーム脳が支配する世界で、ストーリー演出に何度も救われた。
小さな困難を何度も一緒に乗り越えていく
2つのケースとも、ゲームの途中では関係修復という目的など忘れ、ただ如何に相手の能力を見極め協力し、課題/ボスキャラをクリアするかしか考えなくなった。ゲーム後半になればなるほど、お互いの動きを理解してスムーズに先に進めらるようになり、成長実感=親密度が高まる。
ストーリテーマは、愛/Love。二人の愛を取り戻すために、協働/Collaboration、魅力/Attractition、しがらみ/Relationshit、やりたいこと/Passionについて学ぶ。ゲームの世界観を、ストーリを楽しむ。そして、一つ一つの課題/ダンジョンをクリアする成功体験の積み重ねが、途中投げしたくなっても先に旅を続けたい気持ちを鼓舞してくれる。
これは、授業でも同じで、講座を通じた目的ーシラバスに基づき、成長実感(授業における課題解決体験)を積み重ね学習効果を高める(仮説)ゲームデザイン的な発想を取り入れることで、オンライン授業でも、目的を共有しインタラクティブに学び合う関係性をつくりだすことは可能なはずだ。
本ゲームの狂言回しであるDr.ハキムは「道を繋ぎなおす」という。「クローンになる」(環境を理解し自分を操作する)と「時間を操る」(因果論的に感じ行動する)この二つの能力を組み合わせ、(諦めかけていた)共通の目的を求めて旅に出る。様々な局面で2人がもっている能力を何度も出し合い、学ぶことによって関係性/道を修復する。歩んできた道が異なり、これから進む道が違うかもしれないのに、それでも道を繋ぐ意味は何か。愛は道であり、自分を愛するように愛す他者という"奇跡"を説く。
ゲームで愛/友情は深まるか?
プレイして二人の関係はどう変わったか?ケース①では、これまでそれぞれNetFlixやYoutubeで消費していた時間が、プレイ期間中ゲームに置き換わった。ケース②では、次の週末まで待てず金曜に、最後のほうは平日夜に軽くやって週末に仕上げるつもりが、結局週末を待たず一気にゴールまで駆け抜けた。一緒にゲームの世界で過ごした時間の分だけ、二人で共有する「何か」は、確実に深まった気がする。本当の成果は、もう少し時間をおいて、また二人で振り返りたい。お勧め。
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