私の好きな短歌、その49
白雲のすゞしく立てる言問橋一杯一銭のレモン水に賑ふ
宇都野研、『宇都野研全集』より(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p50』)
言問橋とは、東京の隅田川に架かる橋。空からレモン水へと、滑らかに視点が動いて心地いい。レモン水が賑わっているのだから暑い日なのであろう、しかし現代の暑さではなく、暑さを甘んじて受ける余裕が感じられる。まだ地球温暖化の影響が出る前の夏、クーラーのない世界は幻想的ですらある。下句の字余りが楽しい。
当歌集は1938年(昭和13年)、作者62歳で没した年に刊行された。作者生没年は1877年(明治10)ー1938年(昭和13)。