私の好きな短歌、その47

一日に五首づつ詠むと決めてきて老人なればもう駄目だ

 宮柊二、歌集『忘瓦亭の歌』より。(『宮柊二歌集 p248』岩波文庫)

 岩波文庫の解説では、当時作者は糖尿病、リウマチ、眼底出血、脳血栓などで入退院を繰り返していたという。そういう苦しみのなかでの歌だが、余分な力が抜けた自在さがある。
 結句の五音が意表を突く。まさに力尽きているという感じがして老練。ユーモラスであるが、「一日に五首」というまじめさがあってのおかしみであり、悲しみ、寂しさでもある。

 『忘瓦亭の歌』は1978年(昭和53年)刊行。刊行時作者67歳。作者生没年は1912年(大正1)ー1986年(昭和61)、享年75歳。



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