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私の好きな短歌、その18

一日(ひとひ)にて別るる吾子(あこ)のほころびを著(き)たるままにてつくろひやれり

 三ヶ島佳子、歌集『三ヶ島葭子歌集』より(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p76)。

 作者が肺病であるために、作者と離されて夫の実家で暮らしている子と一日だけ会ったのである。上二句が、置かれた状況を簡潔に表している。服を着たままで繕っている母子の睦まじい姿が、夕刻の空を背にした影絵のように浮かんでくる。別れる直前に気づいて手早く治そうとしたのだろうか。
 吉野秀雄の歌に「をさな子の服のほころびを汝(な)は縫へり幾日(いくひ)か後(のち)に死ぬとふものを」(『寒蟬集』)という歌がある。「汝」とは、病臥している秀雄の妻のこと。親としての精一杯の愛情が二首ともに切実に表れていて悲しい。

 1920年(大正9年、作者35歳)作。作者生没年は1886年(明治19)ー1927年(昭和2)享年42歳。

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