生で!(2023.02.07)
妻の誕生日だった。
昼休みに職場の近くのわりと最近できた花屋へ行き、妻へのプレゼントに添える花を見繕ってもらった。
店主の女性は、初めての来店である私に対して随分フランクだった。前にも来たかなと一瞬記憶を辿ってみたが、どう考えても初めてだった。そもそも一人で花屋に来ること自体、年に一度あるかどうかだ。
店主は花を大きく2種類に分けた。ドライフラワーか、生花か。私が生花で花束を作って欲しいと頼むと、「生(なま)ね!」と言って、以後何度も「生」を繰り返す。花屋というより居酒屋みたいだなと思うが、話が早いので有難かった。私は居酒屋よろしく「生で!」と言い、5色のかすみ草で花束を作ってもらうようお願いした。
仕事が終わり夕方、再び花屋に行き、花を受け取った。店主はにこやかと言うより、にやにやしていた。店自体は落ち着いた雰囲気で、おしゃれ感満載なのだが、店主からは居酒屋の女将感が滲み出ていた。しかし出来た花束自体はすごく良くて、気持ちがぱっと明るくなるようだった。ただ、花はむき出しだったので、「これ持って車まで歩くの目立ちますね」と言うと、「目立っちゃってください」と店主は言い、何やら嬉しそうだった。
それから幼稚園へお迎えに行き、子供二人を拾った。車の中ではおしりたんていの歌をえんえんリピートさせられた。家へ着き、おしりたんていのおかげで機嫌の良い長女(3歳)に花束を持たせた。長女にとって花束は少々大きすぎたみたいで、ちょっと歩きずらそうだった。
家へ入り、長女が「ママ、お誕生日おめでとう」と言い、妻に花束を渡した。私が長女にそう言うように教えたのだが、長女は立派にその役割を果たした。
妻はとても喜んだ。日頃、この時間は慌ただしく、妻はカリカリイライラしているのだが、今日に関しては終始にこやかだった。嬉しそうに花を花瓶に生け、花束を包んでいた包装紙を上手に花瓶に巻いていた。別にプレゼントもあったが、完全に花の方が主役になっていた。
そしてさっき。目覚めると深夜1時過ぎ。スマホを見るとこの時間にしては珍しくLINEの通知が一件あったので、確認すると妻から「お花、嬉しかった。ありがとう」と一言メッセージが来ていた。
なかなかない事だった。やっぱ生はなんにしても良いなと思った。