
こわい話(2023.11.29)
相変わらず次男がなかなか寝ない。布団の上で放っておくと恐竜のフィギュアでえんえんと遊んでいる。
なので私はその都度ちょっと怖い雰囲気のお話をする。そんなに怖い話をするとシャレにならないかなと思って、怖めの雰囲気の話をするのだ。
昨日と今日は巨大な提灯が夜中に遠くからやってくるという話をした。
昨日その話をしたところ、目をらんらんとさせて遊んでいた次男がパタッと眠った。効果てきめんだ。その事を話したところ、長男はその話を全然覚えていなくて、提灯の話をもう一度聞きたいというから今日もその話をしたのだった。
そうやって巨大な提灯の話をしていたところ、妻が「逆効果だからやめてくれんかな」とか「子供に負を植え付けんでくれんかな」などと言う。
私はそれに反論する。「現になかなか寝らん子供がすぐに寝てるやろ」とか「負ってなに?そんなもん植え付けてないよ」と。
そうこう話している間にもすでに提灯の話は効果があったのか、長男と次男は眠ってしまった。ほら見ろ。
ちなみに巨大な提灯がやってくるという話は以下。
別府湾の向こうから巨大な提灯がゆっくりゆらゆらやってくる。
月と同じくらい明るい提灯。別府湾の水面を明るく照らしている。
やがて海の上にやって来た提灯。次第に大きくなってくる提灯はすでに月よりも遥かに明るく輝いて、視界が少しずつ白く染まって来る。
別府湾に面した別大国道を走る車からは提灯の下側を覗く事が出来た。そこには巨大な火柱があって、轟々と音を立てて炎が燃え上がっている。そこから発せられる熱も相当なもので、車の中にいる人たちは熱くてたまらず、提灯から逃げ出すように車を飛ばす人があったし、逆にそこで提灯をやり過ごす人もいた。
提灯は海を渡り切り、別府タワーの真上を通った。その際提灯は別府タワーにひっかかりそうになったが、提灯は上手に身を縮めて、別府タワーをかわした。提灯が生き物であるのか何なのかは分からない。
そして提灯はいよいよ次男のところへやってきた。提灯はそこでようやく進行を止めて、まるで目の前に太陽があるみたいに白く眩しい光を放ってそこに留まっている。熱い。視界のもの全てが今にも発火しそうだ。
窓を開けて、提灯を睨みつける次男(2歳)。そして次男は「来たらだめよー!」と提灯に叫んだ。提灯は一瞬ひるんだかに見えた。
次男がもう一度叫ぶ「こうちゃんのところに来たらだめよー!」
提灯の炎に一瞬翳りが感じられた気がした。
その時、鶴見岳を駆け下りるように突風が吹いた。鶴見おろしだ!
提灯は大きく揺らぎ、そのせいで炎がふっと火袋に触れた。瞬間、提灯は燃え上がり、綺麗に風に飛ばされて、巨大な提灯は一瞬で灰になってしまった。
昼間のように明るかった視界はあっという間に元の真夜中に戻った。小さな火がまだあちこちにくすぶっていた。
終
どうだろうか?怖いだろうか?負を感じるだろうか?
しかしどういうわけかこの手の話で子供はよく寝る。妻は反対するけど、子供が寝ないよりはよっぽど良いので、次男の寝つきが悪いうちはもうしばらく続けていきたいと思う。