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学習の4段階の「意識的無能」がキャリアの分岐点になる理由


意識的無能とは

意識的無能とは、自分が知識やスキルを持っていないことを認識している状態、すなわち「わかっているけど、何もできない」状態を指します。これは新しい知識やスキルを習得するための初期段階で、この認識が次の成長段階への動機づけとなります。

この状態は一見ネガティブに感じられるかもしれませんが、自己認識は学習者にとって非常に重要です。自分が何を知らないか、何ができていないかを明確に理解すること、すなわち「自覚」を持つことで、具体的な目標を設定し、効果的な学習方法を見つけることができます。また、意識的無能は他者からのフィードバックを受け入れる柔軟性を持つことも成長を促進します。この柔軟性が新たな学びを加速させ、自身の成長を後押しするのです。

三輪車から二輪車(自転車)への移行

子供が三輪車から二輪車(以降、自転車)に乗り換えるとき、多くは最初に意識的無能の段階に直面します。三輪車では安定して乗ることができたのに対し、自転車ではバランスを取ることが難しくて転倒することも少なくありません。この時、子供は自分が自転車をうまく扱えないことを自覚し、意識的無能の状態にあります。

この時、子供は自分の無力さを痛感するでしょう。そのためには、親(指導者、支援者、介助者)のサポートが重要で、適切なアドバイスや励ましが子供の意欲を引き出すことができます。最終的に、この経験はまた、失敗を繰り返しながらも続けることで、自己改善のプロセスを学び、子供の自己効力感を高めます。

この時、子供は自分の無力さを痛感します。そのため、親(指導者、支援者、介助者)のサポートが重要で、適切なアドバイスや励ましが子供の意欲を保ったり、引き出すことができます。子供はこのような経験を通じて、自己改善のプロセスを学び、自己効力感を高めることができます。

学習(教育)設計の重要性

成長は、継続的な学習の機会を通じて少しずつ知識やスキルを習得する過程で実現されます。意識的無能から次の「意識的有能」の段階に行動変容を遂げるためには、教育工学の分野である「学習設計(ID:Instructional Design)」が非常に重要な役割を果たします。学習設計は、教材や学習体験を効果的に計画し、学習者が知識やスキルを習得しやすい環境を整えることを目指します。理論の詳細の説明は省きますが、学習目標の明確化や適切な教授法の選定、評価方法の設計など体系的なアプローチです。

学習目標の設定

学習目標は、学習者が達成すべき具体的な知識やスキルを示し、学習の方向性を定めます。例えば、自転車の練習では「バランスを取る方法を習得する」や「転倒せずに一定距離を走行する」といった目標を事前に明示することで、学習者は努力の先に達成できる具体的な成果を見据えることができます。目標設定は、学習者のモチベーションを向上させ、効果的な学習を促進します。一方で、目標が明確でない場合や曖昧だった場合、何をどのように、どのくらい学べば良いのかが分からなくなってしまうので十分な注意が必要です。

インプットとアウトプットのバランス

学習(教育)設計では、インプットとアウトプットのバランスが重要です。インプットは情報や知識を受け取ることで、アウトプットは情報や知識の実践や応用です。例えば、基本的な動作を繰り返し練習するメニューでは、学習者が飽きてしまう可能性があります。そのため、インプットとしての理論的な学習、アウトプットとしての実践的な機会バランス良く組み合わせることで、学習者は異なるアプローチから理解を深めることができます。

フィードバックと評価

学習プロセスには、定期的なフィードバックと評価が不可欠です。学習者は、自分の進捗を確認し、成長と改善を把握することで、より効果的に学習を進めることができます。例えば、「昨日よりも転ばなくなったね。だから、バランスを取るときに体の重心をもう少し前にすると良いよ!」といった具体的なアドバイスが有効です。このように、定期的フィードバックと評価を通じて、学習者の理解度やスキルの習熟度を確認し、必要に応じて学習計画を調整します。

モチベーションの維持

学習者のモチベーションを維持することも、学習(教育)設計の重要な要素です。達成感を感じられる小さな成功体験を積み重ねることで、学習意欲を高めることができます。例えば、自転車の練習において、最初は短い距離を目標に設定し、成功したら次の目標に進むといった段階的なアプローチが効果的です。このような機会が提供されることで、学習者は自らの成長を実感し、学びを持続的に続ける動機付けが促進されます。

意識的無能は、自己認識と向き合う機会

学習機会を提供したからといって、学習者が能力を習得して有能な状態になるとは限りません。例えば、資格試験やスポーツでは、求められる基準をクリアした人だけがキャリアをスタートさせられる一方で、基準をクリアできなかった人は別のキャリアを選ぶことが余儀なくされます。こうした状況は、個々の学習者が持つ能力や環境によって異なることを示唆しています。

意識的無能の段階は、自己認識と向き合う貴重な機会です。意識的無能の状態から抜け出すには、自己の限界や適性を正直に見つめることが重要です。失敗や挫折を経験する中で、自分の強みや向き不向きを理解し、それを基に新たな挑戦に臨むことが成長の礎となります。場合によっては適性に合った道を選ぶことで、自己実現の可能性が広がります。意識的無能という局面は、次のステップへ進むための貴重な学びの機会であり、個人だけではなく企業にとっても適切な方向への転換点と言えます。

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山名秀典|OFFICE P
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