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若手社員の退職が示す人材戦略の課題|企業が理解しておくべきポイントとは


若い社員の退職

OFFICE Pは現在、多くの企業の人事戦略と人材戦略を支援しています。具体的な企業名や施策には触れませんが、若い社員の人事戦略における退職について考察します。

今回テーマの「若い社員の退職」は、企業の組織文化や戦略に深刻な影響を及ぼします。具体的には、若年層の離職は企業の競争力を損ない、知識やスキルの喪失を招く可能性が高く、中長期的な成長戦略に対するリスクとなります。そのため、若い社員の退職に関する問題の本質を理解することが、持続可能な人材戦略の構築において不可欠です。

退職の問題の本質とは

「新卒で入社して、2〜3年したら退職してしまう」というケースは、多くの企業が直面している課題です。若い社員(以下、社員とします)の早期退職は、企業にとって採用や人材育成開発の観点からも大きな損失となります。この問題を解決するためには、当たり前のように聞こえますが、「退職の問題の本質」を探ることが重要です。

慣れと習慣

入社して最初の一年目の目標は、「会社と仕事に慣れる」ことです。「会社に慣れる」とは、企業文化、商習慣、人間関係などを理解し、適応することを意味します。一方、「仕事に慣れる」とは、必要な知識やスキル(※企業内特殊技能を含む)、業務の進め方を身につけることを指します。

この段階で「慣れ」が「習慣」に変わり、日々の業務がルーチン化していきます。習慣化が進むと、社員は日常業務の中で仕事の意義、目的、目標について再考する機会が増えます。この再考が、理想と現実のギャップに気づくきっかけとなることが多いです。

理想と現実

社員が会社や仕事に慣れ、習慣が定着すると、次第に社内の状況を客観的に見るようになります。このタイミングで「何かが違う」と感じ始める社員も少なくありません。これは、入社前に描いていた理想と、実際の仕事を通じて感じる現実とのギャップによるもので、社員の心境に変化をもたらすきっかけとなります。この理想と現実のギャップは、社員自身が抱いていた理想と、会社が示した理想との間に生じるもので、どちらか一方に原因を求めるだけでは、根本的な解決には至りません。

コンセプト

理想と現実のギャップが生じると、入社前には魅力的に映っていた会社のコンセプト(当記事ではパーパスやMVV)も、次第に自分には関係のないものだと感じることがあります。例えば、入社時には共感していた会社の目標やビジョンが、実際の業務を通じて経験した現実と合わないと感じるようになることです。そうした違和感が積み重なると、社員は自分の価値観やキャリアイメージと会社の方向性との間に深い溝を感じるようになります。この結果、「退職」を真剣に考え始めるケースが増えていきます。

コミュニケーションのミスマッチ

多くの企業でMBO(目標管理制度)や1 on 1ミーティングなどのコミュニケーションの機会が設けられていますが、これが十分に機能していないケースも少なくありません。例えば、コミュニケーションの場では、やる気に満ちた内容を語っていた社員が、しばらくしてから突然退職するという事例が報告されています。

表面的な対話の限界

この問題の背後には、コミュニケーションが形式的(義務的)になり、深層的な対話が不足していることが挙げられます。また、企業側が主に数字や成果に関心を向けがちで、個々の社員が抱える個別の本質的な問題に十分な注意を払えていないことも、コミュニケーションのミスマッチを引き起こす原因となっています。

さらに、ミーティングの時間や頻度が限られていること、そして聞き手の関心や問い掛け方が不十分なため、社員の潜在的な問題が見過ごされるリスクが高まります。その結果、社員の真の意図や感情が企業側に伝わらず、不満や不安が蓄積し、最終的には退職という結果につながることがあります。

人材戦略を見つめ直す機会

コミュニケーションの形式的な運用は、社員の心理的なニーズや感情の変化を捉える能力を制限します。形式的なやり取りでは、深層的な対話が不足し、社員の潜在的な不満やモチベーションの低下が見逃される可能性があります。また、企業が掲げるコンセプトやパーパスが社員の個々の価値観やキャリアイメージと乖離している場合、社員のエンゲージメントは著しく低下します。このような乖離は、社員が組織に対して感じる帰属意識に影響を及ぼし、最終的には退職という結果につながっています。これらの問題は、企業の人材戦略を見つめ直す機会として捉えるべき経営課題です。

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山名秀典|OFFICE P
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