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打低環境の2024年を振り返る

ボール、飛ばさないことにしました。

中日ドラゴンズ春の珍事の最大の要因とも言える飛ばないボールが用いられた2024年の投手が置かれた環境を振り返ります。

0 相関係数とは

相関係数は高校数学でも出てくるものなので、知っている人も多いかと思いますが一応雑に解説します。

2種類のデータX,Yの相関係数rは

r=(XとYの共分散)/((Xの標準偏差)×(Yの標準偏差))

という式で求めることができます。
相関係数は-1以上1以下の値を取り、相関係数が
1に近いほど正の相関が強く、
-1に近いほど負の相関が強く
なります。

正の相関:一方が大きくなるともう一方も大きくなる
負の相関:一方が大きくなるともう一方が小さくなる

また0に近いほど相関が弱くなります。

1 検証内容

今回は
ERA(防御率)と
K%(奪三振数/対戦打者数)
BB%(与四球数/対戦打者数)
HR/FB(ホームラン数/フライ性打球数)
DER(グラウンドに飛んだ打球のアウトになった割合)
GB%(ゴロ率)
LD%(ライナー率)
OFFB%(外野フライ率)
IFFB%(内野フライ率)

の相関について2024シーズンに100イニング以上投げた先発投手についてそれぞれ調べました。
また2023シーズンについても同様の計算を行い、比較を行いました。

2 ERAとK%の関係

下にK%とERAを縦軸、横軸に取ったグラフを示します。

この2つの数値の相関係数は-0.3376となっており、負の相関があることが分かります。ですが、-0.34程度なのであまり強い相関ではありません。

また2023シーズンの相関係数は-0.29839となりほぼ同じくらいの強さの相関がありました。

3 ERAとBB%の関係

同じようにグラフで示していきます。

2024
縦軸の軸ラベルが打ち間違えで&になってしまっていますが正しくはBB%です

この2つの数値の相関係数は0.08712であり、ほぼ相関関係はありません。

2023シーズンの相関係数は0.403788であり、2023シーズンと比べると2024シーズンはBB%とERAの相関がかなり弱くなっていたことが分かります。

4 ERAとHR/FBの関係

2024

この2つの数値の相関係数は0.5775であり、中程度の正の相関があります。飛ばないボールと言われていましたが、ホームランを打たれる投手ほど防御率は悪くなってしまっていたことが分かります。

また2023シーズンは相関係数が0.44654であったため飛ばないボールではむしろHR/FBとERAの相関が強くなることが分かりました。

5 ERAとDERの関係

2024

この2つの数値の相関係数は-0.5004であり、負の相関があることが分かります。
2023シーズンの相関係数は-0.55529でありほぼ同じ強さの相関が見られました。

6 ERAとGB%の相関

2024

この2つの数値の相関係数は-0.2255であり弱い負の相関が見られました。
2023シーズンの相関係数は-0.22275であったため昨年と相関の強さはほぼ同じでした。

7 ERAとLD%の関係

2024

この2つの数値の相関係数は0.1835であり、かなり弱い正の相関が見られました。
2023シーズンの相関係数は0.29419であり、去年よりも相関が弱くなっています。

8 ERAとOFFB%の関係

2024

この2つの数値の相関係数は0.1235であり、ほぼ相関はありませんでした。
しかし、2023シーズンの相関係数は0.2888であり弱い相関を確認しました。

9 ERAとIFFB%の関係

2024

この2つの数値の相関係数は0.1675でかなり弱い正の相関を確認しました。
しかし2023シーズンの相関係数は-0.15349であり、かなり弱い”負”の相関を確認しました。

10 飛ばないボールの影響はどこに現れたのだろうか

まず、2〜9の中で示した相関係数について整理します。

2023から2024でERAとの相関関係に大きな違いがなかったのは
K%、DER、GB%
でした。この3つの指標が安定している投手は環境に依らず安定した活躍を計算できると言えるでしょう。

2023から2024でERAとの相関関係が強くなったのは
HR/FB
でした。被本塁打の多い投手には2024シーズンのボールは不利に働いたかもしれません。

2023から2024でERAとの相関関係が弱くなったのは
BB%、LD%、OFFB%
でした。与四球の多い投手、ライナーやフライ性の打球の多い投手には2024年のボールは有利に働いたかもしれません。(逆に考えるとライナーや外野フライの多い打者には不利に働いたかもしれません)

またIFFB%が2023シーズンでは負の相関(IFFB%が高いほどERAが低くなる)がありましたが、2024シーズンでは2024シーズンでは正の相関(IFFBが高いほどERAが高くなる)がありました。体感としては内野フライは得点に結びつかないイメージがあるので、2023のように負の相関がある方が自然な気がします。
どちらもかなり弱い相関ではあるので誤差といえば誤差かもしれませんが

以上より、やはり2024シーズンはフライやライナーの多い打者にとっては厳しく、インプレーが多い(三振が少ない)投手にとっては(2023シーズンより)有利な環境であったことが予想されます。

個人的には野球は興行なので、点が入った方が面白いので飛ばないボールよりは飛ぶボールのがいい気はします。

ではまた

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