kotoba club はじめます
今春から「kotoba club」というものを始めることにした。
「言葉」を扱う「クラブ活動」。文字のとおり。
決まった日にみんなが集まり、その日のテーマに沿って言葉を綴っていくというもの。エッセイでも、詩でも、どんな形でもいいなぁと思っている。「一人でもやっていこう」と思いながら、インスタグラムで募集をしてみたところ、7名もの方が「参加したい」と連絡をくれた。嬉しかった。
「kotoba club」をはじめたいと思ったきっかけは、10年前の大学時代に遡る。短大から編入をして入学した四年制大学では、メディアを学んだ。新聞、テレビ、雑誌など、あらゆるメディアについての様々な授業を受講したのだが、その中で一番好きだった(というよりも今でも一番覚えている)授業が、文章を書く授業だった。
1コマ90分だっただろうか。授業当日、いきなり与えられるテーマについて、それぞれが原稿用紙に向かい、自分の考えを書くという授業。テーマは例えば「親友」だったり、「おめでとう」だったり、毎回変わるわけで、受講する生徒一人ひとりが全く違う切り口から書いたりする。次の授業までに講師の先生がそれぞれの原稿用紙に赤ペンを入れてくれ、文章の書き方の基礎から考え方のヒントまでを丁寧に記してくれ、次の講義で全員の前で簡単な好評もしてくれる。誰が書いたかはわからない程度に、いい文章や気になる文章は生徒全員にコピーしてシェアをしてくれ、「親友というテーマでこんなことを書くのか・・・!」など、同じテーマに対峙しているはずが全く違うことを書いている受講者たちの頭の中を垣間見て、驚いたり、尊敬したり、「こんな文章が書けるなんて!」と羨ましく嫉妬したりしていた。
あれから10年。自分が「言葉」を道具にして仕事をしているとは、想像しなかった。いや、そういう仕事がしたくて就職活動もしたが、10年先にも「言葉」を使う仕事をしているとも思っていなかったし、あの頃の自分と今の自分とでは「言葉」への向き合い方がだいぶ変わったように思う。
新聞社、出版社、印刷会社など、メディア業界で働きたいという思いはあった。でも、ただあの頃は「上手い文章を書くこと」がその仕事だと思っていた。それが正解だと思っていた。大学時代の一番好きだった授業で文章を書いていたときも、「上手く書こう」とばかりしていたように記憶している。
でも、30歳を過ぎた今の私は、そういう仕事をしていない。というより、できていないと言った方が正しいのかもしれないのだけれども。
「上手い文章を書ける人」が大手メディアに就職ができるのだと思っていたし、自分や他者のことを上手く表現できる人こそが優秀だと思っていた20代前半のあの頃。
新卒で入社した会社を半年で辞め、何を思ったか四国・高知の端っこへと飛び出て、7年間、見知らぬ土地の役所で働いたかと思えば、今度はフリーランスになった。そんな風に紆余曲折した10年間で、たどり着いた今の私の文章は、上手い下手という言い訳は抜きにして、それよりも「愛」である。それしか取り柄がない。でも、それで良いと思っている(もちろん、課題は山ほどあるけれど・・・)。
自分のことも、他人のことも、上手に書けるほどわかってなんかいやしない。世の中のことをわかりきったように書けるほど頭も良くない。知識もない。それよりも大切にしたいのは、人にも、物事にも、わかろうとして対峙する気持ち、「愛」を持っていたいということ。
そうやって愛を持って生きることの楽しさを、この10年間のほとんどを過ごした高知で学び、ここでの暮らしが「書くということ」「言葉」に対しての自分の態度を変化させていった。
今春から始める「kotoba club」では、このクラブ活動のような時間をともにする人たちと、愛のある時間を過ごしたいと思っている。
賢さ・知識をひけらかす文章や奇を衒った文章ではなく、参加者それぞれが自身の生き方、家族や友人など周りの人々との時間・関係性について、「kotoba club」の時間を使ってもう一度腰を下ろして向き合い、愛を持って素直に考え、それを言葉にする時間。ただ言葉や文章を紡ぐのではなく、「私」と私を取り囲む「誰か・何か」に、いつでもあたたかい人でいられるように。
まずは5月10日にお試し回を、そして、6月以降は毎月1回のペースで開催をと思っています。noteでも、各回開催後に報告を書けたらと思っていますので、良ければ今後もご覧ください。
そうそう、最後に。今回のお試し回に参加が決まった方以外からも「いいですね」と何件か連絡をいただいた。人伝いにも、この活動に対して嬉しいことを言ってくださっている方がいるというお話も聞くことができた。そう思ってくれる人がいることが、とても嬉しかった。
対面での開催のため、遠方からはなかなか参加が難しい。でも、参加者以外にも「いいな」と思ってくれる人がいるということを知り、そんな人たちも大切にできたら。何かの形で一緒にできたらと考えている。これも、「愛を持って生きていきたい」という、私の小さなこだわり、そして、kotoba clubの裏テーマである。