57歳にして人生が大変なことになってしまった男の話【001/これまでのあらすじ】
「ここから3年、最高の年になりますよ」
2024年の正月、占い師がそう告げた。テレビとかに出まくってる、あの有名な占い師Gだ。
「まじスか?やったあ!ありがとうございます」
有名占い師Gに占ってもらえるだけでもラッキーなのに、Gの最高に嬉しいお告げに舞い上がっているのは、ヤマモトハジメ。昭和41年、丙午に生まれた57歳。
「オレって結局、神さまに愛されてるんだよなあ」
これから起こる地獄の日々などつゆ知らず、意気揚々と家路につくハジメであった。
東京のベッドタウンに生まれ、ふつーに地元の小学校に通い、ふつーに地元の中学校に通い、ふつーに地元の公立高校に通い、一浪のすえ都心の私立大学に入った。
高校で野球部に入っていたハジメは、大学でも何かスポーツをやりたいと思っていた。当時は大学ラグビーがものすごい人気。へそ曲がりのハジメはアメフトを選び、でも体育会でやる根性はないから、同好会に入った。
ところがこの選択が、ハジメのその後の運命を左右することになる。
アメフト同好会にコーチで来ていたOBの一人に、広告クリエイターのOさんがいた。
気に入られたのだろうか、なぜかOさん宅に出入りするようになったハジメは、Oさんが作ったたくさんのCMを見せられる。驚いたことに、みんながみんな、みんながよく知ってるCMだった。
「お、おれもこういうことやりてぇ!」
若気の至りで短絡的も短絡的にそう思い込んでしまったハジメは、でもどういうわけかOさんと同じ広告代理店の内定をもらう。
それから長い歳月が流れ、クリエイターの末席を汚すくらいにはなれたハジメは、入社17年目が終わる春に突如独立する。
自分でも訳がわからないが、周囲はもっと訳が分からなかった。いつ潰れるかと周囲をヤキモキさせながら、ところがなんと17年間も食いつないでしまう。
これまでの人生、運だけで乗り切ってきた。
「ここから3年間、最高の年になりますよ」
占い師にこう言われて、「やっぱり神さまに愛されてるんだなあ」と勘違いするハジメの気持ちも、分からなくはない。
しかし、人生そう甘くはない。
今年に入って人生の大問題が、これでもかとハジメに襲いかかる。傾き始めた仕事、認知症が始まった両親、株の大失敗、悪化する妻との関係、勢いで買ってしまったニセコの土地・・・ひとつだけでも十分噛みごたえのある問題が、いっせーのせっでのしかかってきた。
さあ、ハジメはこの大ピンチを乗り切れるのか!?!?