花と言葉の力
外出自粛が続く中、夕方に運動もかねておさんぽに出ることも多い最近。
毎回、海のほうや山のほうなど、気分のままにいろいろなコースを歩いている。
歩く途中にはいろいろな美しい景色があって、お気に入りの場所も増えた。
息切れするくらいの急な坂道を上がったところから見える富士山とか、
その先は海があるヨモギが生えている草木が生い茂った階段とか、
細い道をくねくね行った先にあるヤシの木がある広い畑とか、
小さな畑の端っこにカラフルなお花がある秘密の花園みたいな所とか、
キュウリを栽培しているハウスの奥の玉ねぎだらけの細い道とか。
あげたらきりがないのだけれど、近所にも心がときめく場所はいくつもある。
お気に入りの場所が一つ増えるごとに、うきうきする。
そのお気に入りの一つでもあるのだけど、自宅からほど近いお家のお庭にはいつもたくさんのバラが咲いていてとてもきれい。
赤いバラが見事なくらいに美しく咲いている。
今日もきれいだなあと、たまに端っこのバラの写真を撮らせてもらったりしている。
ある日のこと。
そのバラいっぱいのお庭を見たら、塀の向こうのおじいさんがバラのお手入れをしていた。一生懸命に。
「綺麗ですね、バラ。」
気付くと同時に声が出ていた。
自分でもびっくりしたのだけど、反射的に声が出ていた。
そして、びっくりするくらいの笑顔でそう言っていた。
マスクをしているから、笑っているかどうかは、おじいさんには分からなかったかも知れないけれど。
そして、塀の向こうのおじいさんと目がった。
おじいさんは一瞬びっくりした顔をして、
それから、
こう言った。
「お姉さん、あげる。どのバラがいい?」
と。
そのまま通り過ぎようと思っていた私はびっくりして足をとめる。
隣りで歩いていた夫もびっくりした顔をして足をとめる。
そして、「えええ、いいんですか!いやもうどれでも!」
また反射的に声が出る。
おじいさんは「これがいいかな。いやこれかな。」とか言いながら、
バラを一本、塀の上から差し出してくれた。
はい。どうぞ。
あ、ありがとうございます。
私は笑顔で受け取る。
赤いバラを受け取った後は、そのまま家に向かった。
家に向かう途中、
なんだか嬉しいね
嬉しいねえ
こんなこともあるんだね
ね
コロナで外出自粛でもこんなに嬉しいことがあるんだね
一週間くらいハッピーだわ私
嬉しいね
そんなことを夫と言いながらルンルンとした足取りで家に着く。
そして、お気に入りのグラスに刺して、掘りごたつの上に飾った。
「バラがきれいですねと声をかけたらおじいさんにバラを一本いただいて嬉しかった」
ただそれだけのことかも知れない。
でも、私にとってはとても嬉しいことで、心の中にぽっと明るい灯がともった。そしてその灯りは、いまもずっと灯されたまま。
バラのお花は一週間経つ今も、美しく咲いている。
もうそろそろ力尽きそうだけれど。
きっと声をかけていなかったらバラは私の元にはないだろう。
心が躍るように嬉しくなることもなかっただろう。
一言が持つ力って大きいんだな。とっても。
そして、思ったことは言葉で伝えることが大切なんだ。
お花と言葉の力は無限大だ。
今回のこのおじいさんとバラの出来事で、そう強く思う今。
嬉しいことは、やっぱりその場で伝えようと思う。
もっともっと。
ありがとうとか
きれいとか
美しいとか
嬉しいとか
楽しいとか
いっぱいいっぱい伝えよう。
好きとか
大好きとか
愛してるとか
思いっきり伝えちゃおう。
もっともっと。
そう思う。
と、お花と言葉の力を感じた最近のこと。
ステイホームでも、楽しいこと、学ぶことはたくさんある毎日です。
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