コンピュータでは書く力が育たなと考えているあなたへ
国語科における「書く力」の再定義と指導の展望
1. 「書く力」を捉え直す
現在の国語科教育では、「書く力」は主に「鉛筆で文章を書く技能」として捉えられがちです。しかし、これは「料理する力」を「包丁を使う技術」だけに限定するような、狭い解釈といえます。
料理には下ごしらえから盛り付けまで様々な工程があるように、「書く力」も以下の要素から成り立ちます:
アイデアの整理
表現の工夫
構成の検討
推敲・改善
言語教育を「思考の教育」という原点から見直すとき、「書く力」の新たな定義が必要となってきます。
2. 現代的な「書く力」
2.1 表現方法の多様化
現代の情報伝達では、一つの表現方法だけでなく、複数の表現方法を組み合わせて使うのが一般的です:
文章による説明
グラフや表によるデータの整理
写真やイラストによる視覚的な説明
2.2 複合的な表現力の重要性
文章、図表、画像など、異なる表現方法を目的に応じて組み合わせる
複数の表現方法を効果的に用いて、より分かりやすく伝える
教材でも文章による説明に加え、図表や写真を組み合わせて理解を深める
3. 「書く力」の三層構造
3.1 思考力としての「書く力」
何を書くか、内容を考える力
筋道を立てて考える力
対象を分析し、新しい形で組み立てる力
3.2 構成力としての「書く力」
全体の組み立てを計画する力
文章、図表、画像などの使い方を考える力
それぞれの表現方法の効果を検討する力
3.3 表現力としての「書く力」
適切な言葉を選んで表現する力
図や写真を効果的に使う力
様々な表現方法を調和させる力
4. 指導の具体的展開
4.1 基礎的な言語能力の育成
文字を正しく書く力の定着
語彙を増やし、文法を理解する
文章の組み立て方を学ぶ
4.2 複合的な表現力の育成
様々な表現方法の特徴を理解する
効果的な組み合わせ方を習得する
目的に合わせて構成を工夫する
4.3 総合的な言語運用能力の育成
目的に応じた表現計画を立てる
それぞれの表現方法の特徴を活かす
客観的な視点から見直し改善する
5. 評価の新たな視点
5.1 思考・判断の評価
伝えたいことが明確か
内容の組み立てに筋道があるか
表現方法の選び方が適切か
5.2 表現・技能の評価
言葉の使い方が正確か
図や写真が効果的に使われているか
様々な表現方法がうまく組み合わされているか
5.3 主体性・創造性の評価
積極的に表現しようとしているか
工夫して独自の表現を生み出しているか
見直しと改善に取り組む姿勢があるか
6. 実践における留意点
6.1 表現活動の質的な転換
デジタル機器を使うだけでなく、その特徴を活かす
様々な表現方法の可能性を広げる
考える力の育成につなげる
6.2 基礎・基本の確実な定着
手書きの文字をしっかり習得する
豊かな語彙力を身につける
文章の基本的な組み立て方を身につける
6.3 段階的な指導の実施
児童・生徒の発達に合わせる
少しずつ段階を踏んで進める
計画的に能力を育成する
7. これから、、、
「書く力」の再定義は、従来の国語教育を否定するものではありません。むしろ、基礎的な言語能力を土台として、より豊かな表現力を育成することを目指します。
手書きとデジタル、単一の表現方法と複数の表現方法の組み合わせは、どちらかを選ぶという対立的な関係ではありません。それぞれの特徴を理解し、目的に応じて適切に選択・活用できる力を育てることが、これからの国語科教育に求められています。