身近な鳥の「へぇ〜」がいっぱい! 『エナガの重さはワンコイン 身近な鳥の魅力発見事典』|冒頭と「街の鳥」パートを無料公開!
「さえずりが止まらない 毎日2000回」 ウグイス
「国立競技場でも席が足らない」 アトリ
「翼を広げたら改札2つ分が通れない」 アオサギ
『エナガの重さはワンコイン 身近な鳥の魅力発見事典』(くますけ著)は、「へぇ!」と唸らされ思わず人に話したくなるような、身近な鳥の知られざる魅力をたのしく紹介した一冊です。
5月10日からはじまる「バードウィーク」に向けて、より多くの人に身近な鳥・自然と親しんでいただきたく、冒頭と第1章の「街の鳥」を特別に公開いたします。
はじめに
本書を手にとっていただき、ありがとうございます。
野鳥はもっとも身近で見ることのできる野生生物です。ふわふわのぬいぐるみのような鳥もいれば、いかつい鳥もいます。その見た目だけでも人を惹きつける彼らですが、時にハッとするような野生の生きざまを見せてくれます。
たとえば、公園などで1カ所にたくさんの羽毛が落ちているのを見たことはないでしょうか。これは明らかに「事件」の匂いがしますね。ハトがのどを膨らませて歩き回っているのにもちゃんと意味があって、彼らにとって大切な「儀式」です。鳥たちは日々、私たちの周りでドラマチックな物語を繰り広げているのです。
このドラマに気づくにはコツが必要です。スマホは置いて、空が眺められるくらいの心の余白を作りましょう。そして本書の出番です。
この本は図鑑でも専門書でもありません。テレビのガイドブックだと思ってください。登場人物のキャラクターを知っているとドラマがより楽しめるように、バードウォッチングがより楽しくなる豆知識を一冊にぎゅっと詰めこみました。
ぜひ、あなたの「推し」を見つけてみてください。
鳥の年間スケジュール
鳥の1年をおおざっぱに説明すると、春夏は繁殖期、秋冬は越冬期と2つに分けられます。繁殖期は春に婚活をして、夏は子育てをします。越冬期の秋冬は、寒くエサが少ない厳しい冬に向けた準備と、頑張って乗り切ることに全集中をするシーズンです。基本的に鳥はこのサイクルです。
違ってくるのは場所の選び方です。たとえばシジュウカラは、繁殖も越冬も日本でします。一年中日本に留まっているので、こういう鳥を「留鳥(りゅうちょう)」と呼びます。ツバメは夏は日本で子育てをして、冬は暖かい南の国に渡っていきます。夏にしか日本で見ない鳥なので「夏鳥(なつどり)」と呼びます。ツバメの逆パターンで、ハクチョウは子育ては北の国で行い、冬に日本にやってきます。これを「冬鳥(ふゆどり)」と呼びます。
留鳥が一年中日本にいるといっても、夏は長野で冬は東京、のように国内での移動もあります。翼が生えている生きものならではのダイナミックなライフスタイル。ボクはいろんな地域のいろんな文化を感じるのが好きなので、鳥たちのこのような暮らしに憧れています。
鳥を見るにあたって知っておくとよいこと
地鳴きとさえずり
鳥の見つけ方/おすすめの時期・時間帯
あるといい持ち物/カメラで撮る
気をつけたいマナー
『エナガの重さはワンコイン 身近な鳥の魅力発見事典』「街の鳥」パートを無料公開!
この本は、鳥がおもに見られる環境ごとに「街の鳥」「公園・緑地の鳥」「野山の鳥」「水辺の鳥」の4つに分けて構成しています。
「街の鳥」パートでは、街中で見られるいちばん身近な鳥を18種類紹介しています。見覚えのある鳥も多いのではないでしょうか。
それではスタートです!
体重は単3乾電池 スズメ
もし持ってみたら?
突然ですが、スズメを持ってみたことは、ありますか? ボクはありません。「ないんかーい!」と思われるかもしれませんが、野鳥の捕獲は法律で禁止されているので、持てる機会はほとんどありません。でも、重さを体感してみたいので身の回りの物に例えてみましょう。
スズメの体重は24g。なんと、単3乾電池と同じくらいという軽さ! ふさふさな羽毛に覆われて着ぶくれしているだけで、実際の体はかなり小さめです。
たった電池1個分の重さにスズメの命が詰まっているかと思うと、いつものなんてことない鳥が違って見えてきませんか?
実は短命? スズメの寿命
今日、スズメを見ましたか? 実はそのスズメ、来年にはほとんど別のスズメになっています。スズメの平均寿命はたった1年3ヶ月。見た目がほとんど同じなので、違いがわからないだけなのです。
短命な理由の一つが、厳しい冬。彼らが生き延びるための苦労は想像を絶します。寒いし、エサがないし、敵に襲われるしで、もう大変……。無事に春を迎えられたものはエリート中のエリート。体が強いだけでなく、頭も良くないと生き延びられません。のん気そうに見えるけど、実は日々頑張ってるんですね。
お尻フリフリは警戒のサイン ハクセキレイ
楽しいからではない
コンビニの駐車場などでよく見られるハクセキレイ。いつ見てもお尻をフリフリしています。てっきりノリノリなのかと思ったら、むしろ逆。「こんなにフリフリできるおいらは強いぞ! かかってきてもムダだぞ!」の意味があると考えられています。
コンビニの前で気楽にエサを探しているのかと思ったら、あれはあれで警戒しながら生きているのです。
スマートなボディに図太い神経
車を運転していると、目の前にハクセキレイが出てきました。このまま進んだら轢いてしまいそうな場所を、ちょこまかと歩いています。避ける様子はまるでありません。
「本当に危なくなれば飛んでくれるだろう」と信じ、車を進めたのですが、どこまで行っても飛ぶ様子なし。くちばしにカスったのでは? と心配になりましたが、また元気に歩き回っていたので大丈夫だったようです。
ハクセキレイは、もともと冬鳥としてやってくる鳥でした。それが今では全国各地で通年見られる鳥になっています。それだけ分布拡大ができたのは、スマートなボディに似合わない図太い神経のおかげでしょうか。
カルシウム不足はカタツムリで補給 シジュウカラ
丈夫な殻にするために
シジュウカラが1回の子育てで産む卵の数は8〜9個。卵の殻を作るためにはカルシウムが必要ですが、どうしても不足してしまいがちです。そこで補給のために食べるのがカタツムリの殻。普段は食べませんが、繁殖の時期になると好んで食べるそうです。
一方、複雑な心境なのはカタツムリでしょう。そもそも身を守るために殻があるのに丸ごと食べられてしまうなんて。「せっかく作ったのに意味ないじゃん!」と、殻を放り出したい気分かもしれません。
シジュウカラ語講座
シジュウカラは天敵の種類で鳴き方を変え、危険を仲間に伝えます。
ツミやオオタカは成鳥でも狩られてしまう、とても怖い存在です。「シーッ」や「ヒーヒー」などの警戒音を出して、危険が近づいていることを知らせます。カラスやテンも油断ならない存在。卵やヒナを狙ってくるのです。彼らに対しては「ツピ、ツピ、ツピ」と強い調子で鳴きます。
最後に、ヘビが現れた場合は「ジャージャージャー」です。ヘビだけにジャー。
ツバキの傷の犯人は君だったのか メジロ
甘い蜜が大好き
ツバキの花びらに穴が空いていることがあります。容疑者として考えられるのはメジロです。メジロは花の蜜が大好物。蜜を舐めるときに花びらを足場にするので穴が開いてしまうのです。
ただ、ツバキとしてはメジロに花粉を運んでもらうことを期待してますので、花びらを足場にされるなんて想定内。そのくらいでは壊れない頑丈な花びらにしています。
樹液が甘いのも知っている?
春のはじめ頃、コナラの樹液を舐めているメジロを見ました。まだ寒さが厳しいこの時期、木は凍らないために樹液の糖度を高めます。樹種は違いますがメープルシロップは樹液を煮込んで凝縮したものですからね。メジロはちゃんと甘くなったこのタイミングを知っているのでしょう。ほんと、甘いものには目がないんですね。
ついに声まで甘い?
メジロの鳴き声は「甘い声」と紹介されるのですが、まだメジロの声を覚える前だったボクは「甘い声ってなんだよー。意味わからん!」と疑問に思っていたんですね。でも実際にチィーという鳴き声を聞いてみるとたしかに甘い! やっぱり甘いものばかり食べていると甘い声になっちゃうのでしょうか?
この子らを育てるため 毎日5000匹の虫必要 ツバメ
ツバメ一家の食卓事情
ツバメのヒナは1日におよそ100匹のエサを必要とするといわれています。一つの巣でヒナは平均5羽だそうですので、毎日500匹もの虫を捕まえないとい
けません。食べさせても食べさせても「エサくれー!」とねだられるので、ツバメ一家の胃袋を満たすのは大変です。
狙いはオスバチだ
ツバメが捕まえるのは空中を飛んでいる虫。その中にミツバチも入っているのですが、不思議なことに、わかっている限りでは全部オスバチなのだそうです。たしかにメスバチだと毒針を持っていますから、ヒナに食べさせるにはリスクが高いです。オスは毒針がないので、その点安心。ただ、メスバチも飛んでいる中でオスだけを見分けて空中で捕獲するなんて、ツバメの視力恐るべし!
ツバメの飛び方で天気予報をしてみよう
ツバメは雨が近づくと低い位置を飛びます。低く飛ぶ理由はツバメのエ
サである虫に関係があります。雨の前後には湿度が上がります。小さな虫たちは湿度が高くなると体が湿って重くなり、いつもより低いところを飛ぶ
ようになります。なので、そんな虫たちをエサとしているツバメも低く飛ぶのです。ツバメの飛び方でちょっとした天気予報ができますね。
コラム 電線に止まる鳥 トップ3
ある種の病気、いや特技なんですけど、本当にいつも鳥を気にしていまして。歩いていても、電車に乗っていても、車の運転をしていても、鳥をチェックしています。
運転中はさすがにあぶないので赤信号で止まってるときに電線をチェック。いなければ電柱をチェック。木のほうが止まっているのでしょうけど、電線は遮るものがないので通年観察しやすい場所なんです。
ボクの大好きな本に「電線によく止まる鳥ランキング」がありましたので、ここで紹介します。
なぜ枝に刺すかって? 春の美声のためさ モズ
モテるモズの条件
モズは肉食の鳥です。カエルやトカゲなどを捕まえたら、枝に刺してあとで食べる「はやにえ」ということをします。枝に刺さった動物の姿はショッキング映像なので、趣味が悪いとしか言いようがありませんが、モズにとっては大切な作業です。
特にオスは、たくさんはやにえをして、たっぷり食べて栄養をつけることで、のどの調子がすこぶる良くなります。その結果、さえずりが美声になり、メスにモテるのだそうです。
スナイパーは群れない
モズの見た目はスズメに似ていますが、暮らしぶりはだいぶ違います。モズは杭の上など見通しの良い場所からカエルなどの獲物を見つけ、一直線に飛び降りて仕留めます。相手に気づかれずに狩る姿は孤独を愛するスナイパーのようです。一方スズメは種子や昆虫などを食べる雑食で、グループでわいわいガヤガヤ行動します。
食生活の違いは、くちばしにも現れています。モズのくちばしの先は鋭く、獲物を切り裂きやすいナイフのような機能を持っています。スズメはずんぐりとした太いくちばしで、硬い種子など食べるのに適した形をしています。
シブい色、シブい歌声。さて地声は? カワラヒワ
シブい鳥
カワラヒワは身近にいるわりに、あまり話題に上がらない鳥です(※個人の見解です)。翼や尾羽にワンポイントの黄色がちらりと見えるおしゃれさんですが、体全体は緑とも茶色とも言えない微妙な色です。かなりシブい。
鳴き声はというと、ビィーンとさえずります。さえずりはラブソングなので、明るい感じで鳴く種類が多いのですが、カワラヒワはビィーン。これもシブい。ところが地鳴きという地声のような、普段の会話に使う鳴き声は高く澄んだ声でキリリ、コロロときれいなんです。このギャップが魅力です。
黄色い色は健康の色
カワラヒワの黄色い羽は飛んでいるときに目立ちます。この黄色が鮮やかであればあるほど健康である証です。
黄色は自分自身で作り出せない色なので、食べ物から取り入れるしかありません。必要になるのはカロテノイドという色素です。カロテノイドは緑黄色野菜などに含まれていて抗酸化作用もあることで知られています。なので、質の高いエサをたくさん食べれば体も健康になるし、黄色の発色も鮮やかになるという仕組みです。
オスもメスもナワバリバトル ジョウビタキ
寒い冬に向けた熱き戦い
冬になるとやってくる冬鳥で、オスはオレンジのボディ、黒い翼に入っている白い紋が目立ちます。「ほら、みて!」とばかりに見やすい場所に現れてくれるので観察がしやすいです。
ナワバリ意識の強い鳥で、日本に渡ってきてまずナワバリバトルを始めます。ふつうナワバリ争いをするのはオス同士ですが、ジョウビタキはオスメス関係なく戦い、時には取っ組み合いのケンカになるほどです。春の恋の季節に向けて秋のうちにメスに優しくしておこうなどといった下心も、色気もそっちのけで戦います!
ミラーに映った自分ともバトル
ジョウビタキのエサは虫や種子など。ただでさえ冬はエサが減ります。豊富なエサがあるナワバリを確保しておかないと飢え死にしてしまいます。だからナワバリバトルが大切なのですが、必死なあまりミラーに映った自分とも戦うほどです。
それがボクの車のサイドミラーの場合、無駄に戦わせてしまってはかわいそうなので畳むようにしていますが、道路のカーブミラーとも戦うので、それはどうにもできません。諦めてくれ〜と念を送るしかありません。
新たな生息地は都会だ! イソヒヨドリ
都市に進出中の青い鳥
ボクは北関東の内陸部に住んでいるのでイソヒヨドリには滅多に会えません。しかし、海の近くに住む人にとってはふつうに見られる鳥だそうで、いつも会えるなんてうらやましい限りです。
近年、じわじわと内陸の都市部にも進出しているそうです。ついに我が家で見られる日も近いか!? と期待したいところですが、イソヒヨドリは岩場に生息する鳥で、都市部に進出できているのはビルが岩場に似た環境だからといわれています。
ボクの住む地域はのどかな環境なので、見渡す限りビルらしいものが見当たりません。イソヒヨドリの進出は、まだまだ先かもしれません。
文句ありげなヒタキ顔
名前にヒヨドリと入っていますが、ヒヨドリの仲間ではありません。ヒタキ科といってジョウビタキやツグミなどの仲間になります。どことなく顔もヒタキ顔をしています。ヒタキ顔の説明が難しいのですが、ヒタキの仲間は基本くりくりかわいい目をしていますが、くちばしの角度のせいでしょうか? ツンと上がっていて、どこか文句ありげな顔をしているようにボクには見えてしまいます。
キャベツが甘いことを知っている ヒヨドリ
甘いものへのこだわり
ヒヨドリは雑食で昆虫や木の実など何でも食べますが、花の蜜や果物など甘いものも大好きです。それらの好物の近くに、ほかの鳥がいると大きな叫び声とともにやってきて、全員蹴散らして独り占めにするほどです。
冬の寒さが本格的になってキャベツが甘くなった頃。きっと美味しいとわかってるのでしょう。ヒヨドリがやってきてキャベツをついばみます。農家さんにとっては困りものですが、真冬のキャベツはほんと美味しいですからね〜。食べたい気持ちはわからないでもないです。
鳥の耳はどこにある?
鳥の耳は、どこにあるのでしょうか。ヒヨドリの場合、ちょうど耳の部分の色が変わっていてわかりやすいので紹介します。
実は、ほっぺの赤茶色のところに耳があります。ウサギには大きくて長い耳があるように、生きものによって耳の形はさまざま。鳥ならではの事情としては、飛ぶ邪魔になってはいけないので、目のすぐ横の部分に耳が隠されています。そして赤茶色の部分の形が流線型になっているのがわかりますか? こうすることで飛んでいるときに受ける風の流れを緩やかにして雑音の発生を抑えているそうです。
人気物件はサクラじゃなくてケヤキ ムクドリ
物件選びのこだわり
夕方にムクドリたちが駅前などに集まってきてギャーギャー大騒ぎの騒音問題になることがあります。彼らは寝るためにねぐらへ戻ってきているのです。
ねぐら物件のダントツ人気がケヤキの木です。ただ、ケヤキだったら何でもいいわけではなく、隣の木との距離とかによって好き嫌いがあるようです。
ちなみに、同じように街路樹として植えられているサクラの木は、見向きもされません。もしムクドリとおしゃべりができるなら、どのへんがこだわりポイントなのか聞いてみたいものです。
ちなみに巣の人気物件は戸袋です
ねぐらも巣も、どちらも人間にとっての「家」のようですが、多くの鳥は使い分けています。ねぐらは寝室です。大人になったら多くの鳥はねぐらで寝ます。巣は子育てのときにだけ使うゆりかご。ヒナが巣立ったらもう使いません。
ムクドリの巣は木のうろ(空洞の部分)を使うのですが、人間の建物を使うことも多く、戸袋が人気です。戸袋は雨戸をしまっておく箱の部分のこと。長い間使わないでいると、その空間がムクドリのゆりかごになってしまうのです(うちがそうなりました)。
悪役レスラーとヤドリギの関係 キレンジャク
ネバネバなんて気にしない
クリスマスシーズンにヤドリギの下でキスをすると二人は結ばれるという言い伝えがあります。ヤドリギは国内でも自生する寄生植物です。スキー場などで良く見るのですが、木の一部に大きなマリモみたいなものが生えているのを見たことはないでしょうか。あれがヤドリギです。
そして、この悪役レスラーみたいな顔をしたキレンジャクはヤドリギの実が大好き。この実はものすごくネバネバしていて、フンになって出てくるときまでずっとネバネバ。おしりからネバーと垂れ、別の木の枝にくっついて新しい宿主に寄生する仕組みです。ちなみに食べたことのある人の話では、口の中が1時間以上粘つくほどの粘り気だそうです。
当たり年はいつくるかわからない
見られるチャンスがちょっと低い鳥です。ただ当たり年になれば、テレビのアンテナや電線に鈴なりに止まっているのを見られるくらいカジュアルに出会えます。当たり年かどうかは鳥に詳しい人に教えてもらうか、SNSでチェックするとわかりますよ。
インコだって毎朝通勤 ワカケホンセイインコ
人間は1時間インコは30分
ワカケホンセイインコのオスも、通勤しています。夜、メスは卵を温め続けるため巣に残りますが、オスは巣から離れたねぐらで就寝し、朝に巣へ向かう生活です。東京のねぐらから神奈川の巣まで片道26kmの道のりを通勤していたとの記録があります。電車や車でも1時間はかかる距離です。
実際どのくらい時間をかけているんだろうと飛行スピードを調べてみました。時速50kmも出せるそうなので通勤時間は約30分という計算になります。空通勤には渋滞も、乗り換えもないですもんね。鳥の通勤に憧れてしまいます。
ムクドリ負けないもん
ワカケホンセイインコが巣を作る場所は、木のうろや建物の隙間です。ところがその物件はムクドリも狙っています。ワカケホンセイインコは、体の大きさにものを言わせてゴリ押しでムクドリの巣を奪おうとしますが、ムクドリもなかなか負けておらず、奪われたら奪い返す精神で引きません。今のところムクドリの繁殖に悪影響を及ぼしてはいないそうですので、イザコザしながらも両者うまいこと巣を見つけているようです。
結婚までの道のり ドバト
鳥の婚活は、歌ったり踊ったり、プレゼントしたりと創意工夫に満ちています。ドバトは一年中繁殖期なので、いつもお嫁さん探しに熱心です。公園や駅前にいて観察しやすいこともあり、彼らが結ばれるまでの道のりを観察していたら、パターンが見つかりました。
鳩胸でお願い
のどをふくらませ、尾羽を広げてぺこぺこお辞儀したり、その場で回ったり、メスを追い回したり。メスを見つければ手当たり次第に頭を下げている感じもします。そして、だいたい相手にされていない印象です。
見せかけ羽づくろい
首を大きく背中側に曲げて羽づくろい。ちっとも羽づくろいはできていなくて、してる風。鳩胸行動の合間にちょいちょいはさんできます。清潔感のアピールでしょうか。
最後に味チェック
くちばしを重ねてつつき合っています。ヒナに飲ませるピジョンミルクがちゃんと作れているか味見をしてるのだと思われます。
鼻のコブはコブ
ドバトには白い鼻コブがあります。キジバトにはありません。これはオスのほうが大きい傾向があるようですので白いコブをチェックしてみましょう。オスメスを見分けられるかもしれません。
オスだって授乳できます キジバト
ハトの育児事情
オスも授乳するって粉ミルクでも溶かすの? と思ってしまいますが、ハトの仲間はノドの奥にある器官から「ミルク」が出せます。オスメス関係なくです。それがとっても栄養豊富で、特に生まれたばかりのヒナはそのミルクで育つのです。
ちなみにイラストの授乳の様子はだいぶマイルドに表現しています。実際はヒナが親鳥の口の中に頭を突っ込んで激しめにつつくので、なかなかの衝撃映像です。あとキジバトのヒナの見た目もなかなかにびっくりスタイルで、ETに錦糸卵をまとわせたような姿をしています。
間の抜けた愛の告白
キジバトは、どこからともなく「デーデーポポー」と聞こえてくるあの声の持ち主です。あれはオスからメスへのラブソング。独特なリズムの間の抜けた歌ではありますが、キジバトの世界では告白の歌なのです。また、ナワバリを誇示する意味もあります。あの歌を聞いたほかのオスが「やべえ。強いのがいるから、ここに入るのやめとこう」と思うのか多少疑問ではありますが、彼らの習性なので人間にはわからないのです。
世界で一番多い鳥 ニワトリ
人間よりもはるかに多い
この地球上で一番数が多い鳥はニワトリです。気になるその数は230億羽! 人間の数は80億人ですので、想像を絶するニワトリの多さです。もはや地球は「ニワトリの惑星」なのではと思ってしまいます。もちろん人間が飼育しているから、これだけの数になっています。ちなみに、野生の鳥で一番多いのはイエスズメで16億羽。日本にいるスズメとは近いけど別の種類です。
鳥の体温を感じてみよう
鳥の体温は40〜43度とかなり高め。これを体感するにはニワトリがもってこいです。家や学校でニワトリを飼育しているところもあると思います。もし機会があったら抱っこしてみてください。じんわり温かさを感じると思います。冬ならホッカイロとして持ち歩きたいほどです。
なぜこんなに体温が高いかというと、パパッと飛び立てるようにするためです。もし体温が低いと「では飛ぶ前にウォーミングアップを」なんてことになって、その間に敵に食べられてしまいます。
バードウォッチングでは野鳥の体温を感じることは難しいですが、スズメもカラスもハトも、野鳥はみんなポカポカです。
防衛も子育ても家族みんなで オナガ
ファミリーの一体感
オナガはいつも10〜20羽のファミリーで行動しています。ノラネコが寄ってくれば一家総出で大騒ぎして追い払います。子育ての時期には手の空いている若者らがヘルパーとなって手伝います。このように家族が一致団結できるのは、オナガがカラスの仲間で頭がいいからでしょう。
カラスとの戦い
カラスの仲間ですが、カラスが天敵。卵やヒナを食べられてしまうことがあります。そこで目をつけたのがツミという肉食の鳥。ツミの巣の近くに自分たちの巣を作ればカラスは近づけない。これで安心。さすが賢いですね。
ツミとの戦い
ところが意外な盲点というか必然というか、そのツミに襲われてしまうこともあります。これは計算違い。でもカラスの被害に比べたらマシなのでしょう。
カッコウとの戦い
カッコウは、ほかの鳥の巣に卵を産みつけて、子育てを押し付ける習性があります。一時期オナガもその被害者になりかけました。しかし、ここはファミリーの団結力の見せどころ! 警備を強化し、近づくカッコウを撃退。なんとか、被害拡大は免れています。
カラスにとってカラスは黒くない ハシブトガラス
人間とは違う鳥の視覚
カラスといえば全身真っ黒の鳥ですが、それは人間視点の話。カラスの目には違って見えています。カラスに限らず鳥は、人間よりも多くの色がわかります。紫外線は人間には見えませんが、鳥にはわかります。なので黒一色に見えるカラスも実は模様があるといわれています。
カラスの羽が紫に光って見えることがありますが、そんなものではなく、しっかりと色の違いがあって、お互いの模様を認識しているそうです。一度でいいから鳥の目で世界を見てみたい!
職業は掃除屋さん
ゴミを荒らすのでイメージが悪いかもしれません。カラスはもともと雑食性で、木の実や動物の死骸など何でも食べます。自然界ではこういう生きものがいるおかげでゴミだらけにならずに済んでいます。自然界の掃除屋さんという役割を果たしてくれているのです。
だから、カラスは人間を困らせるためにゴミを荒らしているのではなく、掃除屋さんとしての仕事を全うしているだけなのです。毎週決まった日にせっせとエサを並べてくれる人間の姿は、カラスにはどう見えているでしょうか。
コラム 鳥の体重を身近なモノと比べてみた
鳥は飛ばないといけません。大空を舞うには大きな筋肉が必要ですし、骨も丈夫でないと飛行の力に耐えられません。だからといってゴリゴリマッチョの骨太になってしまうと体が重くて飛べません。鳥たちの今の姿は、骨も筋肉も内臓も羽毛も全部ギリギリまで軽くした努力の結晶でできあがっています。
たとえば骨の中は、空洞です。でもストローのようにすっからかんではすぐに折れてしまうので、骨の中は細かいたくさんの柱で支えてあります。これで強さと軽さを実現しています。
寒さから体を守るため脂肪をまとうこともできますが、やっぱり重くなるので羽毛で体を覆っています。ダウンのあの軽さと暖かさは地球上で最も優れているといわれています。
軽いといっても、野鳥はなかなか持つことができないので、重さを実感しづらいですよね。ここでは身近なモノに例えて並べてみました。スズメを見ながら単三乾電池の重さを手で感じてみると、まるで実際に手にしたような擬似体験ができますよ。
書籍情報
そうなんだ︕ あっと驚く⾝近な⿃の意外なドラマ。
⿃を⾒るのがもっと楽しくなる︕
絵と文 くますけ
監修 上田恵介
定価 1650円(本体1500円+税10%)
四六版 本文192ページ
著者紹介
絵・文 くますけ
子どもたちに、自然の楽しさを、やわらかく伝える専門家。自然ガイ
ド歴15年。関東平野の真ん中で筑波山を眺めながら、すくすくと育つ。
20代最後の挑戦で、体験型環境教育を実践するホールアース自然学
校へ転職。柏崎・夢の森公園での勤務を経て独立。ふざけすぎない、
くだけ方で、行政・企業・先生のウケがいい。おうち時間が増えたの
をきっかけにイラストを描き始め、公園や庭で見られる自然の「へぇ!」
という発見や「そうそう!」と言いたくなるネタをSNSで発信している。
影響を受けた本は『自然語で話そう』(広瀬敏通著)と『足もとの自
然から始めよう』(デイヴィド・ソベル著)。 一番好きな鳥はヒヨドリ。
インスタグラム https://www.instagram.com/kumasuke902/
X(Twitter) https://twitter.com/kumasuke902
Note https://note.com/kumasuke902
監修 上田恵介
鳥類学者。日本野鳥の会会長、立教大学名誉教授、山階鳥類研究
所特任研究員。生態学者として著書多数。日本動物行動学会会長、
日本鳥学会会長なども歴任。2016年第19回山階芳麿賞、2020年日
本動物行動学会日高賞を受賞。