ダンゴムシの迷路実験をやってみた
「この実験は簡単なので、だれでも試すことができます」
『ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学』(山と溪谷社)という本があります。著者の森山徹さんが、いろいろな実験を通して、ダンゴムシの心の存在に迫る本で、本当にダンゴムシに心があるのか?と読む中で知的好奇心がくすぐられる大変面白い深い本なのですが……。
この本でたくさん出てくるのが「ダンゴムシのT字迷路実験」。これ、本には「この実験は簡単なので、だれでも試すことができます」と書いてあるのです。すごく気になりました。
ダンゴムシ迷路実験とは
ダンゴムシは、迷路の角を右に曲がった場合、次は反対の左方向に曲がる、そしてその次は右に曲がる……と交互に曲がってジグザグに歩く性質があります。
これは交替性転向という行動の連続で起こり、ダンゴムシ以外にもいろいろな動物で観察されることが知られているそうです(ヒトでも観察される)。つまり、ダンゴムシは右→左→右→左など、キッチリ交互に迷路を曲がるとのこと。これはぜひ、観察してみたい。社内の生きもの好きが集まる山と溪谷社いきもの部のみなさんと、ダンゴムシ迷路実験をやってみることにしました。
ダンゴムシ専用の迷路キットは100均に売っていた。
このダンゴムシの迷路実験は、身近な生きもののを使ってできる、簡単で興味深い実験なので、小学生の夏の自由研究などでもよく扱われるようです。そのためなのか、ダンゴムシ専用の迷路キットは100均に売っており(2023年夏時点)、早速購入しました。
ダンゴムシはいきもの部員が各々、社内に持ち込みました。
早速、迷路に入れてみました。
予想通りのゴールにたどりつかない
ダンゴムシが「交替制転向」を発現した場合、スタートからゴールまでこのようなルートになるはずです。
この後、何回かやってみましたが、予想通りのゴールへダンゴムシはたどりつきませんでした。
よく調べてみると、どうやらこの迷路実験はダンゴムシの体長によって適切な迷路幅が変わるようです。つまり今回採ってきたダンゴムシにとって、この迷路がジャストサイズではない可能性がありました。また、他にも迷路の床・壁にゴミなどがあると、ダンゴムシはそれを気にしてしまい、予想通りに進まないことがあるようです。
<動画はこちら>
〜迷路改良〜
迷路幅が適切でないからといって、迷路を自作するには大変な労力と時間がかかりそう。そこで、今のキットでいろいろ試行錯誤してみることにしました。まずは、問題のあった分岐に付箋を貼って調整してみることで、ゴールに誘導できないかと考えました。
この改良によって、ほぼ予想通りのゴールに行ってくれるようになりました。
ダンゴムシ以外でもやってみた
いきもの部員のヤマノさんが、ダンゴムシ以外にもワラジムシを採ってきてくれたので、ワラジムシにも迷路に挑戦してもらいました。
ワラジムシはダンゴムシとよく似ていますが、ダンゴムシより平べったい印象です。
ワラジムシはダンゴムシよりも素早く、だいたい4倍くらいの速さでゴールしてくれました。そのため、たくさん迷路実験をやりたい場合は、ダンゴムシよりワラジムシの方が素早いので向いているかもしれません。
※今回実験に使ったダンゴムシとワラジムシは、実験終了後、元いた場所に戻しました。
ダンゴムシとワラジムシでも交替性転向が見られたので、もっとアリとかテントウムシとイモムシとか、身近で採集できる生きものたちで挑戦してみたいなと思いました。
この実験から、ダンゴムシの心の存在がわかるのか?
森山さんは『ダンゴムシに心はあるのか』で、このダンゴムシの迷路実験を使ってダンゴムシの心を調べています。
迷路実験以外にも、面白いダンゴムシの実験がたくさん紹介されています。
そもそも心とは何か?という問いを考える上でも、非常に面白い本です。
<関連記事> 著者の森山さんへのインタビューです。