【担当編集者が語る】ヤマケイの「いい石の本」の話。
誕生のきっかけ
石を拾って名前を調べようと試みた人なら、誰もが共感してくれるはず。
「石、難しすぎる……!!!」
ブラタモリを観て「石の名前をスラスラ言えたら、なんかちょっとカッコイイな」とミーハー心で河原に石を拾いに行った私も、もれなく心の中で叫びました。
図鑑に載っている一枚の写真と見比べても、似ているような、似ていないような。
すこし色が違う気がするし、 この写真には無い模様は何……?
……さっぱりわかりません。
でも、石に詳しい人は一目見て「ああ、これは花崗岩だね」なんて言います。
いったい何に注目して、何を決め手に同定しているんだろう?
そもそも! 石はどうしてこんなに難しいんだろう?
そんな疑問に答えられる図鑑を作ろうと、『くらべてわかる岩石』は誕生しました。
『くらべてわかる岩石』の魅力
①石のバリエーションが豊富
私たちが石と対峙する前には、あることを意識する必要があります。
それは「石は生物ではない」ということです。
石は生物とは違い、鉱物の割合や、圧力のかかり具合によって、連続的に変化するもの。
「花崗岩」とか「チャート」とか、それぞれ名前はつけられますが、当然「●●岩に近い△△岩」のような、中間的な特徴をもつ石も存在します。
従来の図鑑の、典型的な特徴を表した一枚の写真だけでは同定が難しい原因はここにあります。
この本では、そんな石の「グラデーション」を見せるために、それぞれの石のバリエーションを多数掲載し、拾った石をたくさんの写真と比較できるようにしました。
②実物大写真と拡大写真
写真はなるべく実物大に近いサイズで掲載しました(倍率は各ページ上端に記載)。
実物と比較した際に、表面の質感や鉱物の見え方に相違が無いように工夫しています。
また、3倍拡大写真も豊富に掲載しているので、ルーペで観察した際にも見比べやすくなっています。
③濡れた石や風化した石も掲載
野外で拾った石はたいてい濡れています。
そうすると、図鑑に載っている乾いた石の写真とは色や質感が異なり、一見同じ石には見えないことも。
本書ではそれぞれの石について、濡らす前後の写真を掲載しました。
濡れていると色あざやかに、模様がくっきりと見え、特徴が分かりやすいというメリットもあります。
また、河原で拾える石は流される中で風化していたり、鉄を含み褐色を帯びているものも多く見られます。
そんな石もあえて掲載し、リアルな石の姿が分かるように工夫しました。
実は苦労したこと
①光沢感の表現が難しい
美しい写真にこだわりのあるヤマケイの図鑑。
この本では特に、雲母特有のギラギラ感、黒曜石のガラス光沢、片岩のキラキラ感といった、石の特徴的な光沢を写真で伝えるのに苦労しました。
カメラマンの中村英史さんと相談しながら、1つ1つの石に合わせてライティングを調整し、撮影は毎日夜遅くまでかかりました。
膨大な写真の中から、著者の西本先生と「これだ!」という一枚を選び、掲載しています。
②石、重すぎる!
ひとつひとつは小さな石でも、集まるとかなりの重量物です。
石を詰めた段ボール(総重量30kg超)をキャンプ用キャリーカートに載せ、ガラガラ引きずって新幹線で東京から愛知大学へ……(途中でダンボール崩壊)。
なかなかいい運動になりました。
岩石研究者の方々は、もっと大きい石のサンプルを大量に背負って山を歩くのだから、すごい体力です。
『くらべてわかる岩石』は、ここでは語りきれない、他の岩石図鑑にはない魅力をたくさん秘めた一冊です!
この本を手掛かりに、岩石観察を始めてみませんか?
石の名前を調べようとして、一度は挫折した人にこそ、手に取って欲しい図鑑です。
\拡大写真と豊富なバリエーションで、拾った石がくらべてわかる!/
『くらべてわかる岩石』
西本昌司・著、中村英史・写真