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【読書感想文】傲慢なウサギとお人好しのカメの新イソップ物語『新・ウサギとカメ 短編小説』
有名なイソップ物語のウサギとカメのお話があります。本作は、この寓話を新たな視点で再解釈した短編小説です。とある山の頂で、ウサギはかつて敗北を喫したカメとのレース結果に納得がいかず、カメにリベンジを挑みました。今回ウサギが出した条件はあまりにも厳しいもので、カメにとっては絶望的な状況で物語はスタートします。
本作でまず面食らったのは、あまりのウサギの傲慢さでした。ウサギは勝負に勝った方が相手を好きなようにして良い!という傍若無人な要求をカメに飲ませるんです。一方のカメは、ウサギの挑発に応じざるを得ない状況に追い込まれ、非常に苦しい立場に立たされてしまいます。なんといってもこの対比が、物語に深みを与えていると感じました。
ということで、ウサギに言われるがままに競争に応じるものの、実際には勝ち目がないことを理解しているわけです。いよいよレースが始まるのですが・・・ここでカメは、作業服姿の人間に捕まってしまうというまさかの展開です。いろいろな意味で、予想の斜め上を行く結末が待っています。
いずれにしても、誰もが知っているイソップ童話を基にした本作は、短編ということもあって日常の息抜きにもぴったりです。軽い読み物でありながら、読み終わった後には考えさせられる要素もありました。自分自身も、日常生活の中で競争や評価に悩むことが少なくないので、カメの苦境に共感するところもあります。時には、勝つことだけが全てではないということを思い出させてくれる作品でした。