![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/164552083/rectangle_large_type_2_5840d321b3ec6e09cb3f8e85dfe9cd5c.png?width=1200)
【読書感想文】鬼が引き起こす世界規模の鬼ごっこが始まる!『鬼ごっこ 短編小説』
皇南輝の『鬼ごっこ 短編小説』は、斬新な設定と緊迫感ある展開が魅力の一冊だ。ヒマラヤの奥地に突如現れた鬼から始まる世界規模の「鬼ごっこ」という独特なストーリーは、単なるパニック物語に留まらず、深い人間ドラマも描いている。
主人公は、日本でペットショップで働く金沢亜優美という若い女性。鬼が日本に上陸し、瞬く間に広がっていく恐怖と混乱の中で、亜優美が感じる不安や希望が鮮やかに伝わってくる。特に新宿のスクランブル交差点でのシーンは圧巻で、都市の喧騒と人々のパニックが緻密に描写されている。
この小説を読んでいると、日常の何気ない瞬間がいかに大切かを考えさせられる。自分自身も普段の生活が一瞬で変わる可能性を感じると、背筋が寒くなる思いだ。例えば、大地震や台風といった自然災害時に感じた緊張感。それがこの物語を通じて鮮明に蘇ってきた。
恐怖や混乱の中でも、人は他者を思いやる心を忘れない。それがこの物語の大きなテーマである。
本書の魅力は、そのエンターテインメント性にある。ユーモアを含んだ描写も多く、読んでいて時には笑ってしまう場面も。まるでパニック映画を観ているかのような感覚だ。そして、意外な結末が待っていることもあり、最後まで目が離せない。