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【読書感想文】アメリカ建国の裏に隠された人間ドラマ『メイフラワー号 地獄の航海』

メイフラワー号といえば、イギリスから新大陸アメリカに渡った最初の入植者の航海船であることは多くの人がご存じでしょう。本書は、宗教的使命を持つピルグリムたちのメイフラワー号の航海と、新たな生活を求める冒険者たちの物語を描いたアメリカ建国の神話に新たな光を当てる作品です。

本編冒頭においてはまず、メイフラワー号航海の目的そのものが誤解されていたことが示されます。つまり、この航海に乗り組んだ者たちの大半は決して宗教的信念に基づく開拓者ではなく、新天地での経済的出世を夢見た一般民衆だったのだそうです。

そんな自由と機会を求める人々の不屈の精神と、新世界での生活を夢見る強い意志を本書は描き出しています。テニスコートほどの狭い船内での生活、食糧不足、病気、そして互いの衝突といった、航海中のメイフラワー号の苦難、そして、新大陸到着後の彼らの挑戦も、同じくリアルに伝えています。

私が読書を通じて感じたのは、この航海が単なる歴史的事実を超えた、人間の業の深さを示す記録であるということです。読み進めるうちに、船上での生活の厳しさや、新世界での未来への希望が、まるで自分の体験のように感じられました。著者は、登場人物たちの内面に深く踏み込み、彼らの恐怖や希望、決断を繊細に描き出しています。

総評として、『メイフラワー号 地獄の航海』は、アメリカ建国の背景にある人間ドラマを、鮮やかに、そして深い洞察をもって描いた作品です。歴史的な出来事をただ記録するのではなく、それを生きた人々の視点から描くことで、過去の出来事を新たな視点で捉え直すことができるでしょう。

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