【読書感想文】現実と仮想の境界を超えて『スノウ・クラッシュ〔新版〕 上』
連邦政府が機能不全に陥り、巨大企業が支配する近未来。主人公であるハッカーのヒロは、仮想空間「メタバース」を舞台に、謎のドラッグ「スノウ・クラッシュ」を追う。
本作のポイントは、仮想空間と現実世界の境目が曖昧になった世界観だ。 ヒロがメタバースを駆け巡る姿は、まるで私たち自身がその世界に足を踏み入れたかのような臨場感がある。
一方で、物語は多岐にわたる要素を盛り込み過ぎており、散漫な印象を受けた。 さらに中盤以降はさまざまな事件が同時進行し、どう収束に向かうのか、読んでいて物語に始終振り回された感もあった。
また、終盤の宗教に関するテーマは、少し重苦しい感じもあった。しかし、このテーマが物語に深みを与えていることも事実だ。これらの要素が物語全体にどのような影響を与えるのか、ページをめくる手を止めさせないエネルギーがある。
総じて本作は、仮想と現実がどのように交錯し合うのか、そしてそれが私たちの生活にどのように影響を与えるのか、考えさせられること間違いなしの一冊だった。