【読書感想文】永遠の乙女が再び姿を現すときロードスの平和は破られる。新旧の英雄が交錯する『ロードス島戦記』最新作『ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)』
ファンタジー小説の金字塔とも言える『ロードス島戦記』シリーズの最新作。水野良さんは、30年以上にわたってこのシリーズを書き続けてきましたが、今回は新たな時代と新たな主人公を描いています。正義とは何かという問いに挑むことが、この本のテーマです。
ロードス島は、かつての英雄パーンが亡くなってから、再び戦乱の時代に突入しました。その中で、パーンの後継者として〈ロードスの騎士〉を名乗るライルは、ロードス島の平和を守るために戦います。しかし、その正義は曖昧で不確かなもの。自分の信念と行動に疑問を抱きながらも、ライルは強大な敵と対峙していきます。
この本のおすすめポイントは、ディードリットの復活です。パーンの恋人であり、〈永遠の乙女〉と呼ばれるエルフの戦士ディードリット。パーンの死後、彼女は「帰らずの森」に隠れてしまいましたが、ライルの説得によって、再び戦場に姿を現します。ディードリットは、ロードス島の歴史に深く関わっており、伝説の時代の秘密を知る数少ない人物です。彼女の存在は、物語に大きな影響を与えます。
私が本書で特に胸を打たれたのは、ライルとディードリットの関係でした。ライルは、自らロードス自由騎士を名乗り、パーンの後継者として、ディードリットの力と知恵を必要としています。二人の間には、恋愛とは違うが、友情とも違う、特別な絆が生まれていきます。ライルは、ディードリットからロードス島の歴史や伝説を学び、自分の正義について考え直します。一方のディードリットは、ライルから新しい時代の風を感じ、自分の役割について見つめ直します。このように、本書では、ライルとディードリットのやりとりが多く描かれており、二人は、互いに影響しあいながら、ロードス島の運命に立ち向かっていきます。
『ロードス島戦記』シリーズのファンにはもちろん、ファンタジー小説が好きな人にもおすすめの本書ですが、シリーズの第一巻にあたり、まだまだ続きがあります。ライルとディードリットの冒険は、これからどうなっていくのでしょうか?次の巻が待ち遠しいです。