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【読書感想文】謙虚さの美徳と高慢の代償『クねずみ』

常日頃から周囲にヘイトを振りまいていたクねずみは、他のねずみたちからあわや暗殺されるところであった。危機一髪のところで猫の大将に助けられたクねずみは、恩を返す形で子猫たちの家庭教師を引き受けることになる。しかし、その役割を果たす過程で、クねずみの本質的な性格が露呈し、最終的には悲劇的な結末を迎えることとなる。

本作の見どころは、キャラクターの性格描写の巧みさにある。特に主人公のクねずみの高慢さと、それに対する周囲の反応が鮮やかに描かれている。例えば、クねずみが子猫たちに対して取る横柄な態度や言葉遣い、子猫たちの質問を無視するような行動によって表現されている。これにより、クねずみの性格が具体的に伝わってくるのだ。

この物語を読んで、人間社会の縮図を見ているような感覚を覚えた。高慢な態度を取る者が周囲から孤立し、最終的に自らの首を絞めてしまうという展開は、現実世界でもよく見られる光景である。

また、猫の大将の寛容さと、それを裏切るクねずみの行動の対比も興味深い。猫の大将はクねずみを助け、仕事まで与えるという思いやりを示す。しかし、クねずみはその恩を仇で返すかのように、子猫たちに対して横柄な態度を取り続ける。この対比により、謙虚さと感謝の心の重要性が浮き彫りになっている。

『クねずみ』は、一見単純な寓話のようでありながら、高慢さの愚かさ、謙虚さの大切さ、そして社会における調和の重要性など、多くのテーマが凝縮されている。

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