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【読書感想文】パルプマガジンと怪奇映画の奇想天外な融合『怪奇探偵リジー&クリスタル』
1938年のロサンゼルスを舞台にした、異色のミステリー作品です。主人公は、私立探偵エリザベス・コルトとその助手、少女クリスタルの二人。彼女たちは、それぞれ独自の“特殊な身体”を持ち、その特性を生かして様々な怪事件に挑みます。
本作の魅力は、何と言ってもその独特な世界観にあります。1930年代のハリウッドを舞台に、パルプマガジンやSF映画へのオマージュがふんだんに盛り込まれており、当時の文化や流行に詳しい読者にとっては、ニヤリとできる要素が満載です。こうしたマニアックな薀蓄は、一見すると敬遠する読者を増やす要素にも思えますが、むしろそれが物語に厚みを与えることに一役買っており、他では味わえないテイストにあふれた作品になっているのです。
また、単に奇妙な事件を羅列しているだけでなく、登場人物たちの個性的な魅力もポイント。不老不死の体を持つリジーと、透明人間であるクリスタルの対比、当時のハリウッドスターや作家など、実在の人物が多数登場し、メタ的な要素もふんだんに散りばめられています。
本作は、娯楽小説としての完成度が高く、パルプマガジンやSFの知識がなくても楽しめます。私は、軽快なテンポで進行する物語にどっぷりつかり、気がついたら一気に読み終えてしまいました。