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【読書感想文】目を閉じて、耳を塞いで、感じる感動『アリアドネの声 (幻冬舎単行本)』

主人公のハルオは、救えるはずの事故で兄を亡くした過去を持ち、その贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職した。ある日、業務の一環で訪れた障がい者支援都市「WANOKUNI」で巨大地震に遭遇。彼は、地下の危険地帯に取り残された目が見えず、耳も聞こえない中川博美を救うため、前代未聞のミッションに挑むことになる。

本作の魅力は、その独特な緊張感と感動的なストーリーである。ハルオが中川博美を救うために奮闘する様子は、緊迫感があり、ページをめくる手が止まらない。光も音も届かない絶対的迷宮の中で、彼がどのようにして彼女をシェルターへ誘導するか、その過程は非常に興味深く描かれていた。

私自身、技術的な描写と人間ドラマが融合したこの作品に非常に感銘を受けた。特に、ドローンを使った救助シーンは、まるで自分がその場にいるかのような臨場感を感じた。技術の力と人間の絆がどのようにして奇跡を生み出すのか、その描写は非常にリアルで感動的だった。

また、本作は恐怖と未知への探求心、そして人間の絆を描いた点も非常に興味深い。ハルオが兄を亡くした過去と向き合いながら、中川博美を救うために全力を尽くす姿は、人間の強さと弱さを同時に表現しており、心に深く響いた。

物語の終盤には、予想外の展開が待ち受けており、最後の5ページは涙なしでは読めないほどの感動がある。余分なエピローグが一切なく、涙した後は想像に委ねる形で終わる点も好感が持てた。

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