【読書感想文】生きづらさを抱えた子弟の憤りに共感『魔導の系譜 〈真理の織り手〉シリーズ』
全4作の骨太な国産ファンタジーのシリーズ1冊目。魔導士としての素質がない師匠と、文字の認識に大きなハンデを抱えた弟子の二人が、世界の真実に迫る物語です。
さて、魔法使いもので有名なハリーポッターでは、ホグワーツ魔法学院でいろんな先生から魔法や魔術を習って習得しますが、この本の魔導士は、特定の師匠について生活を共にしながら一心同体で学んでいく完全徒弟制度を取っています。
この師匠と弟子のバディが今作の主人公ですが、序盤から胸の痛くなる展開が始まります。師匠のレオンは、魔導士としての力を発現できずに苦しんでいます。一方、弟子のゼクスは極めて高い魔導士としてのポテンシャルがあるものの、文字を認識できないために魔導書を読むことができません。レオンはゼクスを1人前に育てて王都に送り出すことを目指していますが、その過程で二人は村の人から信用を失ってしまいます。
中盤、レオンは王都に召喚され寄宿生活を送ることになります。そこでこの世界の魔導士の複雑な立ち位置が語られます。この世界の魔導士は禁忌とされる力を持ち、一般の人から恐れられさげすまれる一方で、その強力な魔導の力は貴重で国力(主に軍事)になくてはならないものです。レオンは魔導士の存在を解放する理想論に惹かれてこの勢力に与することになります。
本書の描く生きづらさを抱えたレオンとゼクスの憤りなど、生きづらさを抱えた人にこそ共感できる内容です。