【読書感想文】禁断の書が暴く心の奥深くに潜む闇『悪魔祈祷書』
一冊の奇妙な聖書をめぐる物語です。雨宿りに訪れた大学教授が、古本屋の店主から聞かされる話。それは、悪魔崇拝の書物「悪魔祈祷書」が、ひょんなことから古本屋に持ち込まれたという、奇妙な出来事でした。
悪魔祈祷書は、世界に一冊しかないと言われています。その書物を読んだ者は、破滅へと導かれるという噂も。そんな物語は古本屋の店主の語り口によって進みます。彼の独特な語り口は、どこか滑稽で、まるで、怪談話を聞かされているような、不思議な感覚に包まれます。
この物語の最大の魅力は、その不気味な雰囲気でしょう。夢野久作の筆致は、幻想的でありながらも、どこか現実的な鋭さを持っています。例えば、教授がこの書物に触れることで、彼自身の内面に潜む暗い欲望や恐怖が浮き彫りになり、心の奥底に秘められた本質が露わになってくるようにも感じました。悪魔祈祷書は、単なる魔術書ではなく、自己の内面を見つめ直す鏡のような役割を果たしているのかもしれませんね。
重厚なテーマを扱いながらも軽妙な語り口が心に残る一冊でした。