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【読書感想文】白鯨との最後の戦い。白鯨は神か悪魔か?そしてエイハブの運命は?『白鯨(下) Kindle版』

白い巨大な鯨への執着に取り憑かれた船長エイハブと、彼に従う船員たちの壮大な冒険と切ない結末を描く「白鯨」。下巻の物語は、エイハブ船長たちがついに白鯨モビー・ディックと対決するところからスタートします。

この無敵の鯨は、人間の攻撃を軽々とかわし、船やボートを次々に破壊していきます。そして、エイハブは白鯨に渾身の銛を投げつけるも、ロープに足をとられて、海の底へと引きずられてしまうのでした。生き残ったのはイシュメールだけ。彼は破壊された船の残骸にしがみつき、救助を待つのでした。無念に苛まれるイシュメールの姿は、この戦いの壮絶さと、その結末の悲しさを物語っています。

本書のテーマは、人間の運命、自由意志、そして自然との闘いです。白鯨を捕えることで運命を変えられると信じていたエイハブですが、白鯨は彼の意志とは無関係に、自分の本能に従って行動します。この本の見どころは、白鯨との戦いの衝撃的な結末。エイハブの運命を受け入れさせる白鯨との対決から、私は、人間の自由意志の限界、そして人間の意思とはまったく無関係な自然の無慈悲を感じました。

同時に私は、この作品を通して、人間の生き方や価値観について深く考えさせられました。白鯨への執着はあまりに強すぎるあまり、エイハブは他の一切が見えなくなってしまいます。彼の自由意志は、実は白鯨に操られていたのかもしれません。対照的にイシュメールは、白鯨への興味や好奇心はあっても執着することはありません。彼は出会った人々や文化に関心を持ち、学んでいきます。エイハブとイシュメールの対照的な生き方に興味を惹かれると同時に、私自身の生き方は、いったい二人のどちらのに近いのだろう・・・とも考えさせられました。白鯨に対する人間の感情は、まるで私たちの本質を映し出しているようにも思えるのです。

上下2巻に渡るこの物語は、単なる海洋冒険小説ではなく、人間の心理や哲学を深く掘り下げた作品といえます。白鯨という象徴を通して、人間の存在や意味について問いかけるこの本は、楽しくもあり、苦しくもあり、深く考えさせるものになるでしょう。人間の心理や哲学、そして白鯨という神秘的な存在に魅了されたい人におすすめです。


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