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【読書感想文】昭和最大の未解決事件を描いた衝撃の長編小説『罪の声』
昭和最大の未解決事件を題材にした本作。物語は、京都でテーラーを営む主人公が、父親の遺品の中から一冊のノートと一カセトテープを見つけることから始まる。そのテープには、幼かった主人公自身の声が録音されており、それが30年以上前に起きた未解決事件の脅迫に使用された音声と一致していたのだ。
本作のポイントは、緻密な構成と、まるでドキュメンタリーを読んでいるかのような詳細な描写だろう。著者の塩田氏は元新聞記者ということもあり、事件の背景や登場人物たちの心理描写が非常にリアルに描かれている。特に、主人公がテープの音声を初めて聞いた時の衝撃は、まるで自分もその場に立会っているかのような臨場感を与えてくれた。
また、この作品の魅力は、事実とフィクションが絶妙に組み合わされている点にある。グリコ・森永事件をモチーフにしているという事実は、物語にリアリティを与えつつ、同時に想像力を掻き立てる。
ただし、物語が終盤に近づくと、展開がやや慌ただしく感じる部分や、もう少し丁寧に描写してほしいと思う箇所もあった。それでも全体として非常に満足できる作品である。特に、事件の真相に迫るにつれて、主人公の内面が複雑に変化していく様子は印象的だった。