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【読書感想文】湯川学が挑む悪魔の手、連続殺人の謎に迫る『ガリレオの苦悩』
「悪魔の手」と名乗る人物からの恐ろしい予告状。天才物理学者・湯川学を挑発する文面には、連続殺人の犯行予告が記されていた。湯川は、新たなパートナーとなった内海薫と共に、常識を超えたトリックの数々を解き明かしていく。しかし、事件の裏には、湯川自身を深く傷つける過去が隠されていた。
シリーズ第四弾となる『ガリレオの苦悩』を読んだが、今回も、湯川の飄々とした語り口と、科学的なトリックの数々に心を奪われた。犯人の心理描写も深く、なぜそのような事件を起こしたのかまで抜かりなく押さえられていた。
シリーズを通して、湯川は天才的な頭脳を持ちながらも、どこか人間味あふれる人物として描かれている。今作では、特にその人間性が深く掘り下げられており、科学者としての探究心だけでなく、嫉妬や孤独といった感情も抱えていることがうかがえるのだ。
読後は、完璧に見えていた彼が、実は様々な悩みを抱えていることを知ることで、より一層、湯川という人物に感情移入することができた。
また、今作から登場した内海薫も、シリーズに新たな風を吹き込んだという意味で一役買っている。湯川のクールな性格に対して、内海薫は熱心で情熱的なキャラクター。二人の掛け合いは、物語に軽快なリズムを生み出し、最後まで飽きさせない。
科学の力で事件を解決していく過程で、湯川は自身の心の闇と対峙し、成長していく。科学と人間の心の複雑な関係が見事に描かれた傑作だった。