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【読書感想文】恋と信仰の間で揺れる、心揺さぶる冒険譚『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙Ⅱ』

本書は、賢狼ホロの娘ミューリと、聖職者を目指す青年コルの冒険物語。人気ファンタジー小説「狼と香辛料」の続編となるシリーズの第2巻です。

前巻から引き続き、教会の不正に立ち向かうコルとミューリ。港町から舞台を一転し、二人は海賊の住む島へと向かいます。その地で彼らは異端視されている「黒聖母」信仰に触れることになるのですが、果たして無事に任務を遂行できるのでしょうか。

そんな本作のテーマは、「信念」だと思います。商人としての矜持と経験を備えたロレンスや堅狼と言われたホロと比べると、コルとミューリはまだまだひよっ子です。そんな二人を支えるのが「信念」ではないでしょうか。

教会の真実を追求しようとするコル、心配と恋心を半々に抱えながらコルの伴走者となるミューリ。私は物語を読みながら、こうした強い信念が、若い二人が様々な困難に立ち向かうよりどころになっているのではないかと感じました。

加えて、コルとミューリの関係の進展も見どころです。二人の結びつきは前作からさらに太くなりますが、決して平坦ではないところが憎らしいんですよね。コルはミューリの求愛に戸惑い、ミューリはコルの心を掴もうと奮闘する。二人のやりとりは、時に甘く、時に切なく、時にユーモラスで、飽きさせません。

本作でも、緻密に描かれた経済や宗教、歴史や文化など、ファンタジーの世界にリアリティを感じさせる「狼と香辛料」シリーズの魅力は健在です。何より、ミューリの献身ぶりは見逃せません。狼と香辛料シリーズのファンはもちろん、新たにこの世界に入りたい人にもおすすめできる一冊です。

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