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【読書感想文】地層との対話、賢治の目を通して『イギリス海岸』
宮沢賢治の「イギリス海岸」は、大正から昭和にかけての日本を代表する童話作家であり詩人の随筆集です。この作品は、花巻農学校で教鞭をとっていた賢治が、生徒たちと共に自然の中で過ごした日々を綴ったもので、彼の深い自然観と教育者としての姿勢が垣間見える内容となっています。
本書のテーマは「自然との対話」です。賢治は、川を「海」と呼び、その理由を地層との会話から読み解くことで、自然界の不思議と美しさを生徒たちに伝えています。生命に対する畏敬の念なくしては、真の自然観は育ちません。そういった思想が随所に現れているためです。ここには、賢治の自然への畏敬の念と、知識を共有する喜びが込められています。
見所は何よりも、師弟の掛け合いの生き生きとした描写にあります。生徒たちの素朴な質問に、賢治は子供に分かりやすい言葉で答えながらも、深遠な自然観を伝えています。こうした対話を追体験できるのが本書の醍醐味だと私は感じました。
賢治の深い自然理解と、それを伝える独特の表現力が光る一冊です。