【読書感想文】秘密の恩人、絆を深める文通の日々『あしながおじさん』
本書は、孤児院出身の少女ジュディ・アボットが、匿名の後援者の支援を受けて大学に進学する物語だ。ジュディは、その顔も名前も知らない恩人を「あしながおじさん」と呼び、大学生活の様子を手紙で報告する約束をする。
本作の見どころは、ジュディの成長過程を生き生きと描いている点だ。彼女の手紙には、学業や友人関係、休暇の過ごし方など、大学生活の喜びや悩みが率直に綴られている。例えば、初めてのダンスパーティーで緊張しながらもドレスを着こなす様子や、難しい授業に苦戦しながらも懸命に勉強する姿が描かれ共感を誘う。
物語が進むにつれ、ジュディは様々な経験を通じて成長していく。孤児院育ちというコンプレックスを乗り越え、自信を持って自分の意見を述べるようになる。また、裕福な家庭出身の友人ジュリアとの交流を通じて、自分の出自に誇りを取り戻すのだ。
そして最後に明かされる「あしながおじさん」の正体は、ジュディにとって意外な人物だった。実は彼女が以前から知っていた人物で、その事実を知った時のジュディの驚きと喜びもひとしおであった。
私は、本作を読んで、人との繋がりの大切さを強く感じた。ジュディは「あしながおじさん」との文通を通じて、自分の考えを整理し、成長していく。また、大学での友人関係や、後に恋人となるジャーヴィスとの出会いなど、様々な人間関係が彼女の人生を豊かにしていく様子が印象的だった。ジュディの経験は、私たち一人一人の人生にも重なる部分があるだろう。困難を乗り越え、自分の価値を見出していく過程は、年齢を問わず多くの人の心に響くはずだ。
本作は、主人公ジュディの純粋さと知的好奇心、そして周囲の人々との心温まる交流が、心を捉えて離さなかった。また、20世紀初頭のアメリカの大学生活や社会情勢も垣間見ることができ、歴史的な観点からも興味深い。