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【読書感想文】影が動き出すとき、正義が牙をむく『影の中の影』

ウィグル人亡命団を巡る国際的な陰謀を舞台にしたハードボイルドアクション。白昼の東京で起きた襲撃事件、そしてそれを取り巻く陰謀。正直、予想をはるかに超える面白さだった。まるでスパイ映画のような緊迫感に、息をするのも忘れてページをめくっていた。

主人公の景村瞬一は、どこか掴みどころのない魅力的な人物だ。卓越した格闘術を持ちながらも、どこか孤独そうである。また、アクションシーンも本作の見どころの一つだ。景村の華麗な格闘シーンは、まるで映画を見ているかのような臨場感を与えてくれる。

個人的に最も共感したのは、景村が自身の過去と向き合いながら、新たな道へと進んでいく姿だ。彼は、過去に犯した過ちと、その償いを背負いながら生きている。その葛藤が、彼の人物像をより深く、そして魅力的に描いている。

作者の月村氏は、この作品の中で、国際的な政治問題や人権問題といった重いテーマを扱っている。しかし、難しいテーマを扱いながらも、読者を飽きさせない巧みなストーリーテリングで、最後まで一気に読ませる作品に仕上がっている。

『影の中の影』は、アクションと社会問題がしっかりと結びついた作品であり、楽しみながらも考えさせられる内容だ。月村了衛の手によるこの作品は、まさにノンストップ・アクションの真髄を味わえる一冊である。

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