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【読書感想文】シンプルな線と色使いが魅力の名作絵本『もりのなか』

マリー・ホール・エッツの『もりのなか』は、シンプルながらも深い魅力を持つ絵本です。物語は、主人公の男の子が森へ散歩に出かけ、ラッパを吹きながらさまざまな動物たちと出会うというものです。彼らと一緒に行列を作って歩くシーンは、まるで自分もその場にいるかのような感覚を味わえます。

この絵本の最大の魅力は、現実と空想の境界を曖昧にする点です。森の中でライオンやゾウ、クマといった動物たちに出会うことは現実ではありえませんが、物語の中では自然に描かれています。この自由で親しみやすい展開は、子どもの純粋な想像力をリアルに感じさせ、幼少期の無限の可能性を象徴しています。

物語の最後には、男の子のお父さんが登場します。このラストシーンは、父親が単なる保護者としてだけでなく、子どもと共に楽しみ、想像の世界を共有する存在として描かれています。「またこんどまでまっててくれるよ」というセリフは、動物たちとの別れを前向きにとらえ、次への期待感を残します。このさりげない会話が親子の絆を強調し、安心感を与える終わり方は、家族の温かさを感じさせますね。

『もりのなか』は、子どもの純粋さや想像力を大切に描いた絵本であり、親子で楽しむのに最適な絵本です。物語の中で繰り広げられる動物たちとの交流やかくれんぼ、そして親子の温かい瞬間は、誰しもが一度は感じたことのあるような懐かしさを呼び起こします。短い物語ながら、心に残る深いメッセージを持った一冊です。

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