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【読書感想文】心揺さぶる出会い、異文化が織りなす束の間の旅路『七つの魔剣が支配するXI (電撃文庫)』
進級を控えたオリバー達の幕間を描くシリーズ第11弾。本作では、彼らが仲間の故郷を訪れる旅に出ることから物語が始まります。
連合各国を巡る船旅を経て、カティの故郷である湖水国へと足を踏み入れる一行。その地で彼らが目にするのは、人と自然が織りなす奇跡のような光景と、亜人種の集落での暮らしです。物語はさらに進み、シェラの実家であるマクファーレン家への訪問を経て、そこでの新たな出会いが彼らを待ち受けています。
本書のテーマは、"自己と他者の理解"です。異国の地を訪れることで、自分たちとは異なる価値観や習慣に直面し、多様性を認識する機会を得ます。加えて両親の過去を知ることで、仲間の背景にも思いを馳せる場面があり、他者理解の重要性を認識させられます。過去作からの成長を窺わせつつ、キャラクターたちが自己を見つめ直すきっかけを与えているのです。
見どころは何と言っても異国風物の生き生きとした描写でしょう。湖水国の広大な森や湖の数々、亜人種の集落など、作者ならではの想像力が遺憾なく発揮され、各国の文化的特色も巧みな表現で描かれています。また色とりどりのキャラクターとの出会いにも注目です。大胆な性格のシェラの母との交流は、ユーモアと人間味にあふれ、楽しむことができました。
キャラクターの内面の機微にも言及する、見応えのある一冊でした。