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【読書感想文】警察の階級間の偏見や不服従が重なり合うなど、全体を通して登場人物の間には大きなドラマを感じる1冊『開かれた瞳孔』

ジョージア州の小さな町の地元の食堂。この町である日残忍に切り刻まれた若い大学教授が発見され一気に町中がパニックになります。町の小児科医であり検死官でもあるサラ・リントンが検死を行い、サラの元夫である警察署長のジェフリー・トリバーが捜査を指揮し始めたところ、数日後に地元の女性が磔担っている姿が見つかります。

本書は町の検死官で小児科医のサラ、サラの当時の元夫である警察署長ジェフリー・トリヴァー、そして警察の副官で被害者の妹のレナの三人の主人公によるトライアングル・バイオレンス・ミステリー、3つの大きな視点で物語は移り変わり、やがて連続して被害者が発見されることで一層サスペンスは深まっていきます。いわゆるフーダニットの把握は一筋縄ではいきませんが、全体的な楽しみを損なうほどではないと思います。

全体を通して登場人物の間には大きなドラマを感じました。私は小説の中の過剰なロマンスが苦手で、過度に物語が感情的になると面食らってしまうんですね。その意味で本書は、警察の階級間の偏見や不服従が重なり合うなど、様々な角度から描かれており、この点では一線を画す内容でした。個人的には、事件に関わる人たちが皆こぞって才能を持ちながらも、私生活に大きな問題を抱えており、これら個人的な問題が捜査の過程で再浮上してくる・・・というところが気に入っています。

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