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【読書感想文】未来社会の暗部を描く、衝撃のディストピア小説『虐殺器官』
伊藤計劃の『虐殺器官』は、9・11の後の世界を舞台にした近未来SF小説。先進国がテロとの戦いで厳しい管理社会になり、内戦や大規模虐殺が増える後進国との対比が描かれています。
大規模虐殺の背後にいるとされる謎の男ジョン・ポールを追う、米軍大尉クラヴィス・シェパード。彼の任務は、ジョン・ポールの正体と目的を明らかにすることです。事件の真相に迫る中で、シェパードはジョン・ポールの目的や、「虐殺の器官」の存在について真実を探ることになります。
本書を読んで印象的だったのは、現代社会への鋭い批判と、未来への不安が巧みに織り交ぜられている点です。登場人物の心理描写も緻密で、特にシェパードの葛藤や苦悩がリアルに描かれています。また、ジョン・ポールというキャラクターの存在感も強烈です。彼は単なる悪役ではなく、独自の哲学を持つ複雑な人物として描かれ、その言動や思想には魅力が感じられるのです。
『虐殺器官』は、緻密なプロットと深いテーマ性で、人間の本質や社会の問題について考えさせられる作品です。ぜひ手に取ってみてください。