【読書感想文】遺伝子操作された動物と蒸気機関の機械が織り成すスチームパンクSFの傑作『リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)』
ローカス賞を受賞したスチームパンクSF三部作の第一巻です。
舞台は架空世界で展開される第一次世界大戦。「ダーウィニスト」と呼ばれる英国やフランスでは、遺伝子操作で生み出した巨大な動物たちを兵器や乗り物として使役。対する、ドイツやオーストリアなどの「クランカー」陣営は、蒸気機関やディーゼル駆動の機械文明を発展させています。オーストリア大公夫妻の暗殺をきっかけに、この二つの文明は戦争へと突入します。
そんな本作の主人公は、二人の少年少女です。一人は、暗殺されたオーストリア大公の息子であるアレック。彼は、数名の家臣と共にストームウォーカーという多脚マシンで、両親を殺した一派から逃亡を余儀なくされます。
もう一人は、空に憧れ男装して英国海軍航空隊に志願した少女デリン。彼女は、リヴァイアサンの乗組員として、アレックと出会います。敵味方の立場にあるにもかかわらず、否応なく友情を育んでいく二人。しかし、彼らの周りでは、ダーウィニストとクランカーの戦争が激化の一途をたどるのでした。
私が思う本書の魅力は、やはり、対象的な二つの文明の描写です。バイオテクノロジーと機械工学という二つのテーマが、非常に独創的なアイデアで物語に息づいています。例えば、リヴァイアサンは、クジラをはじめ多種多様な動物の遺伝子を組み合わせて作られた飛行獣で、その体内には、様々な生き物が共生しています。対するクランカーの機械は、二脚歩行や八脚歩行兵器の他、巨大な飛行船や潜水艦なども登場します。
また、これらの文明は、現実の歴史とも関連付けられているのもポイントです。例えば、ダーウィニストは、進化論の発展によって生まれた文明であり、クランカーは、産業革命の発展によって生まれた文明であるという設定になっているんですよね。
歴史と科学と空想と冒険をこれでもかというほどぎっしり詰め込んだ本作はでは、ガジェットが登場するたびにワクワクさせてくれました。