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【実話】タイ射撃会社ものがたり#5

(連載再開に当たり、自称を「ワタシ」から漢字の「私」に変えました。理由は、なんとなく、です。

私の「射撃ツアー」のホテルへの営業は順調だったわ。
肝心の射撃場はまえに言ったようにタイ陸軍のリッパな施設。距離は25メートル、射的は人型もあるけれど、あとあと工夫もしたの、それはまたそのときにね。

とにかく「売り」は、「軍施設」、「弾薬の量」、つまり、「本物の体験」

観光案内所はすっ飛ばして、上級スタッフに話を通す。
JWマリオット。
「メモランダムを作ってきてほしい」
そのときの私はまだ大学に行くまえ、高校中退の当時でもめずらしい中卒さん。
「イエス、サー」

さっそく辞書で調べると、「覚え書き」、タイの東大、チュラロンコン大学の売店に行って探すがそういうモノは無いのよ。
そのへんの学生を捕まえて訊くと、ただの契約書らしい。
事務所のパソコンでメモランダムと一番上に大書して、条件を羅列して持って行ったわ。

「ふむ、君、ここにスペルミスがあるぞ」
「それは失礼しました」
「私たちはJWマリオットだ、メモランダムすらまともに書けない会社とは付き合えんな」
「そうですか、それではご縁がなかったということで」
わざわざ手間かけさせてー、一生泊まってやらんからなー、零細企業で働いているけれどシェラトン・グランデの常連なんだぞー
なーにが、「私たちはJWマリオット」だ、従業員じゃないか、こっちは客になれるんだぞー

そこ以外は私のスマートな服装と流ちょうな英語、まあまあなタイ語で「契約」を結んでくれたわ。
また送迎の車は社長と相談して銀製品のおみやげ物屋のミニバンを主に使うことにしたの。

「射撃ツアー」の帰りに銀製品のおみやげ物屋に寄ってもらうのが交換条件。1、2名の場合はタクシー。
射撃ツアーは社長か私がアテンドする、「営業」で雇ってもらったんだけれど、早々に私がサボっているのがバレたのねー

ホテルが一巡してそこそこお客の紹介がくるようになったから、エアコンの効いたラウンジでアイスコーヒーでも飲みながら東海林さだおの文庫本なんか読んでいたんだけれど、「そこそこのお客」を社長1人ではさばけなくなって、私にヘルプの電話がよくかかるようになっちゃって。

「今、どこや?」
「えーと、アマリホテルですー」
「おぬし、この前もアマリにおらんかったか?」
「いや、フォローアップしなきゃいけない事情が。。」
「現場がもうまわらん、アテンドにナナホテルに行け、4人、ドイツ人だ、車は手配してある、これからは射撃ツアーもやってもらうけん、理由は分かっちょうな」
「はいー」

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