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すっかり忘れていたけれど、人はずっと独りで居るだけではいけないのでした。

隣の部屋から、シャワーの音や、いびきの声が聴こえてきます。

平屋を借りてひとりで住まい始めて2年。
住みはじめは、壁を通して隣り合い住まう人のいない快適さに毎日感動を覚えていました。

以前住んだ部屋で、音に対して異常なまでに敏感な人が隣におり、ちょっと物音を立てただけでその都度叫ばれた事がありました。

管理会社に訴えたところ、直ぐに対応してくださり、それから叫ばれる事はなくなりました。

けれど、隣に生活音を嫌に思っている人がいるという前提が僕の中ですでにできてしまっていたので、それだけでとても住み心地が悪かったです。

だから平屋に引っ越してきた時の感動は、ひとしおでした。

毎日生活する場所であるから、ほんの些細な事がとても重要で、気付かぬうちに積まれてしまうストレス程、厄介なものはありません。

そんなストレスを、すっかり忘れていたことに、今日気が付きました。

ちょっと旅に出ようと思い立ち、今日から東京に来ています。

ビジネスホテルをとって、今その室内にいるのですが、隣の部屋からのいびきがゴーゴー聴こえてきています。

確かに隣の部屋に人がいる。
その気配を、久しぶりに感じました。

そこで思ったのは、すっかりひとりに慣れてしまっていた、ということ。

ストレスなく過ごすことと引き換えに、誰かと暮らすことのたしなみを、うっかり忘れてしまっていた自分に、危うさを感じた次第です。

完全にひとりでいることにも、
常に隣に住まう誰かを気にすることにも。

どちらにも善し悪しがある。

そんな、当たり前の事をハッと思い出しました。

それだけで、旅に出て良かったと、そう思ったのでした。

とても意地っ張りであまのじゃくなその魔女は
いつも当たり前のようにひとりだった。

そんな魔女がカッコーのたまごを孵化させて
育てはじめた。

カッコーを育てるうちに、あまのじゃくな魔女は、
自分の中にある愛に気がついてしまった。

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