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恋のはじまり。【日本酒との出逢い】


おわりとはじまり


人生で何番目かに入る最悪の日に、人生を変える出逢いをした。

大学3年の冬。私には大好きな人がいた。
もう何年も感じてなかったドキドキに、ワクワクに、ときめきに、不安に。
自分じゃコントロールできない不思議な感情に振り回されつつ、幸せな毎日。
でも、その幸せは突然私の前から姿を消した。
私が見ていたあの人は、私じゃない人を愛していて
そこに入る隙がないことを知ってしまったあの日。
ショックで、悔しくて、やりきれなくて、全てを忘れたくなった。
嘘だと信じたい、夢だと思いたい。
突然のことで友達も呼べず、もうどうにでもなれと一人で初めて居酒屋に入った。
私の人生を変えた、小さいはずの大きな選択。
一生をかけて知り続けたいと思った世界との出逢い。


はじまりのはじまり


メニューを見て、パッと目に溜まったのは日本酒の文字。
お酒は好きだし、それまでもよく飲む方だったとは思うけど、なんとなく避けていたジャンル。
おじさんが飲むものだし、度数が高くて美味しくはない。
でも今日は、とにかく手っ取り早く酔えればなんでも良かった。
やり場のない失恋の傷と向き合うことが不可能な、おバカな脳みそを手に入れたかった。
「日本酒をお願いします」と店員さんに声をかけると「どちらされますか?」と店員さん。
どちらにされますか??
当時の私は、獺祭以外の日本酒を知らないし、メニューにはその救いの一手の名前もないし、どちらにするかと聞かれても読み方すら分からないものばかりだし。
悩んで黙り込んだ姿に、優しいお姉さんが手を差し伸べてくれた。
「いちごのような甘味がする鳳凰美田とかおすすめですよ!」
いちごの香り??日本酒に甘味??
あの臭くて苦い日本酒をそんな風に感じるわけがないと思うと同時に、
どんなものだろうと好奇心が止まらない。惹かれた。
「じゃあそれでお願いします」
単純で直感しか信じない私の性格に、今の私はこの上なく感謝している。
ありがとうあの時の私。その直感が生んだ選択で、私の人生はもっと豊かなものになったから。


出逢いの味


鳳凰美田。
栃木県の地酒として人気の高いこの銘柄は、
上品な香りと、華やかな甘味で日本酒とは思えない飲みやすさ。
蔵元の小林酒造は、全ての吟醸造りを"舟しぼり"や"雫しぼり"で行っているらしく、このこだわりが高級感あふれる雑味のない味を生み出しているよう。

なんてことはもちろん知らず、ぼーっと口に運んだ一杯。
衝撃が走るというのは、このことを言うのだろう。
数分前まで酔えればなんでもいいと思っていたのに。
日本酒になんか一つも期待していなかったのに。
恋に落ちたようだった、一目惚れと似た感覚。
私が日本酒と出会った瞬間だった。


恋路の行方


その後のことはあまり覚えていない。
一瞬の衝撃と、その味とははっきりと覚えているのに
どうやってお店を去ったのかも、なんならどうやってあの失恋の傷を癒したのかも私の記憶には残されていない。
でも私は今も、あの日出会った"日本酒"に恋をしている。
知れば知るほどもっと知りたくなるし、追いかけたくなる。
だって毎回全然違った素敵な一面を魅せてくれるから。
しばらくはまだ恋焦がれているような気がしているし、なんなら一生をかけて追い続けることになると思うから、
その愛をこうしてnoteに綴ることにする。
私の人生に彩りを与えてくれた君に、出逢えた感謝の気持ちも込めて。
そしてこのラブレターを誰かが読んで、一緒に愛してくれる人が一人でも増えたら嬉しい。
日本酒の虜になったOLのただの独り言。





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