波を見、波を聞きながら 宮本輝「幻の光」 を思う
4月11日に伊良湖岬に行って海を見てきました。春先の海はうねって波を立てていました。サーファーや、釣りびとが見えます。ザーという波の音を聞きながら宮本輝の小説「幻の光」を思い出していました。
小説「幻の光」の概要は、宮本輝の『幻の光』は、12歳のときに祖母が失踪した過去を持つ女性・ゆみ子が、夫の自殺後、奥能登の小さな村に住む男性と再婚し、過去の悔いと向き合っていく物語です。
ゆみ子はなぜ夫が自殺したのかという問いに悩まされます。死んでしまった以上問いただすことはできません。もう永遠に問いに答えを与える人はいません。ゆみ子はそれでもその問、謎を抱えたまま生きていきます。なぜ自殺したのか、なぜ何も話さず死んだのか、どうしたら止めることができたのか。残された人間には問が残されるのみです。
やがて再婚し奥能登にやってきたゆみ子は日本海の荒波の音を聞きながらも、問の声はやみません。
謎とは解かれるものではなく、ただ持たれるものです。ゆみ子は謎を抱えたまま波の音を聞きながら、今日も過ごしていくのです。
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