空 2022/11/19
わたしは 小さな小鳥です
ふふっ
〝小さな小鳥〟って おかしいですね
でも ほんとにそうなんです
たとえば 小鳥といえば
スズメさんかな すぐ思い浮かぶのは
わたしは そのスズメさんより
小さいです ひとまわり
そう だいたい 2センチくらい
ね、やっぱり 小さな小鳥 でしょ?
わたしは 体が黄緑色で
目のまわりだけ 白いです
なので 人間さんからは
メジロだなんて 呼ばれています
得意なのは 飛ぶことです
そう 結構なスピードで
あ、人間さんは 飛べないんでしたね
ふふっ かわいそうな人間さん
だって 飛ぶって
ほんとに 楽しいんだもの
風と じゃれあっこして
雲と 追いかけっこして
どこまでも どこまでも 飛びたいな
わたしの願い
好きだから
この空が
広くて
何のじゃまもない 自由な空が
*
地面に小鳥が落ちていた
黄緑色の小さな小鳥
実際それは
〝小さな小鳥〟だった
小さいとは分かっていたが
間近に見ると
こんなに小さなものだったとは
駅までの歩道
国道は今朝も渋滞
遮音壁が取りかこむ
透明なアクリル板
その先に
空があると思ったのだろう
痛かったね
びっくりしたね
ティッシュにくるみ
街路樹の茂みにとむらった
手を合わせ
目をつぶる
前にもあった
同じことが同じここで
もう嫌だ
もうこんなの見たくない
固く閉ざしたまぶたから
気持ちたちがあふれだす
目を開ける
空があった
アクリル板の向こう側
ぐにゃぐにゃに ゆがんだ空が